アメリカでは、新しい患者さんが入院する際の準備として、患者さんの使う備品を一通り揃える、という仕事があります。ロックがかかった大きなガラス張りの物入れ(備品ディスペンサーと言ったら良いでしょうか)があり、パスコードを入れるとその病棟にいる患者さんの名前のリストが出てきて、選択するとロックが解除されます。そして取り出す備品のところにボタンがあるのでそれを押します。このシステムは患者さんにチャージするため、という人もいれば、ただ単に在庫管理のためだという人もいました。
まず初めに取り出すのが洗面器、その中に歯磨き・歯ブラシ、石鹸、シャンプー、マウスウオッシュ、ガーグルベイスン、くし、ティッシュ、など日用品を入れていくのですが、それ以外にも医療用品で使い捨てのものも入れます。必ず入れていたのは体温計と血圧測定用のカフでした。これらのものは患者の間でシェアするものではないとされ、患者さん一人一人に所有してもらい、入院中はそれを使うようになっていました。これは院内感染を削減するために導入されたようでした。もちろん「使い捨て」ということなので、その患者さんが退院する場合は体温計はお持ち帰りできるアイテムでした。カフも持って帰っていただいてもよかったのですが、そのカフは自動測定器につなげるもので、それだけでは何の役にも立たないので、患者さんが退院したあとはゴミ箱行きでした。
橋本実和
(米国・日本看護師、米国看護学士)
IPEC看護英語教育アドバイザー
アメリカ・カリフォルニア州のCommunity Collegeで看護教育を経てAssociate Degree in Nursing(ADN)を取得。NCLEX-RN合格後、バークレー市内の病院のがん・血液科病棟にて病棟ナースとして5年間従事。その間にカリフォルニア州立大学にて看護学士を取得。帰国後、IPEC看護英語専任教師として活躍しながら、日本の看護師免許を取得。現在はインターナショナルスクールのスクールナースとして働きながら、IPEC看護英語教育アドバイザーを務める。
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以前に、私自身が日本の病院での入院経験で逆カルチャーショックを受けたと書きましたが、今回はその第2弾です。私の場合は手術の予約をし、十分に準備をする時間があったので、入院生活に必要な「あれこれ」を揃えるのは難しくなかったのですが、この「病院の中で使うものを持参する」という習慣には少し驚きました。アメリカの病院に入院するときに必要なものは下着くらいです。下着以外はこだわらない限り、病院が提供します。(入院代に含まれていると聞いたこともあれば、機械から取り出すときに患者さんにチャージされている、とも聞いたことがあります。)中には病衣の下に何も着ない・履かない患者さんもいましたので、その場合は何も持参するものがないことになります。