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【海外の看護現場から】日勤のお仕事 in イギリス

【海外の看護現場から】

新型コロナウィルスの影響もあり、看護師の皆さんは病院で忙しい毎日を送っていらっしゃることと思います。イギリスの看護師も非常に多忙ですが、業務内容と1日の流れは日本と少し違っていました。今回は、そんなイギリスの病院における日勤の様子をお伝えします。

まず、私が働いていた病棟の申し送りは朝8時から始まります。イギリスではbedside handover(患者さんのベッドサイドでの申し送り)を中心に行っている所が多いと思います。全体での申し送りは、急変のあった患者さんや、転倒、褥瘡、失踪などのリスクのある患者さんについてだけで、5分ほどで終了していました。その後、夜勤のリーダーから日勤のリーダーへ患者さん全員分の申し送りをします。それ以外の看護師は自分の受け持ち患者さんのベッドサイドに行き、それぞれの担当夜勤看護師から申し送りを受けます。日本でbedside handoverを取り入れている病院で働いたことがありますが、夜勤の看護師が日勤に比べて少ないので、なかなかスムーズにいかない時もありました。イギリスでは日勤と夜勤の看護師の数がほぼ同じなので、とても理にかなった申し送り方法だと思います。

ベッドサイドでは、自分と一緒に働くhealthcare assistant(HCA  看護助手)も一緒に申し送りを受けます。イギリスの急性期の病棟では看護師とHCAの数もほぼ同じなので、ペアを組んで働くことがほとんどです。HCAにも担当の患者さんが割り当てられ、担当看護師と一緒にケアに当たります。たまにHCAの数がそろわず、1人のHCAを複数の看護師でシェアすることもあります。

そのペア制度が活躍するのがシーツ交換です。イギリスでは毎日行います。日本で働いていた時は、どの病院でも大抵は週1回でしたから非常に驚きました。自力で動けない患者さんはベッド上で清拭しながら、動ける患者さんはシャワーを浴びている間にシーツを交換し、午前中はほぼ患者さんの清潔介助に追われます。

次に昼食時の薬の準備ですが、これも日本とはかなり違うと思います。日本で働いていた病院では、与薬カートの患者さん毎の引き出しに朝・昼・夕・就寝前と一回ごとに分包された薬が入っていて、それを配る形式が多かったです。イギリスにもdrug trolley(与薬カート)はありますが患者さん毎には分かれておらず、その病棟で常時使用される内服薬が、薬局で売っているような箱の状態で雑然と並んでいます。看護師は毎回、患者さんのdrug chart(医師が書く処方薬の表)を見て、その中から必要な薬を選び出すのです。その際に薬品名はもちろんのこと、有効期限、その薬がなぜ患者さんに必要かを確認し、1回分の量を計算して患者さんに手渡します。内服を確認したらdrug chartにサインをし、誰が投薬をしたのかを明確にします。とても時間がかかりますが、イギリスでは投薬は看護師の業務の中で特に重要な部分を占めていると考えられています。大抵はナースステーションとは別にdrug room(薬の保管部屋)があり、看護師たちはそこで内服薬や輸液の準備をします。患者さんの食事前になると非常に混み合いますが、その日の状況を報告し合ったりして、コミュニケーションの場にもなっていました。

患者さんの昼食が終わると自分たちの休憩ですが、特に時間は決まっておらず、ペアになったHCAと相談して交替で取ります。その時にリーダーは病棟にいる看護師の数が半分以下にならないよう調整します。イギリスらしいのは、午前と午後に各15分ずつティータイムがあることですが、残念ながら忙しくて取れないこともあります。

午後からは、手術後の患者さんや新しい入院患者さんの受け入れ、翌日の退院患者さんが安全に帰るために、地域医療のスタッフや理学・作業療法士と連絡調整などをしてあわただしく過ぎ、また夕食時の投薬の時間になります。そのあたりから時間を見計らって看護記録を書き始め、終業時間を目指して業務調整をしていきます。

夜の申し送りが終わるのは20時30分。長い1日がやっと終わります。

日本で働いていたころは、海外の看護師はナースステーションで事務員や医師たちと談笑したりして、あまりバタバタと動き回っているイメージがありませんでした(海外の医療ドラマの見過ぎでしたね)。しかし、イギリスの病院で実際に働いてみて現実を思い知りました。看護師の忙しさは世界共通です!

ブログ執筆者

吉濱 いほり 英国・日本看護師、英国看護学士

日本で看護短期大学を卒業後、病棟勤務を経て渡英。Supervised Practice Program (現在のOversea Nurses’ Program)を履修し、英国看護師としてNursing and Midwifery Councilに登録。脳神経外科・内科病棟に勤務しながら、City, University of Londonにて看護学士(BSc Hons)を取得。National Health Serviceの病院で14年間勤務後、 2019年に帰国。

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