もっと早く手にしたかった看護英語のテキストです。
この本は、NPO法人プロフェッショナルイングリッシュコミュニケーション協会から2015年10月に出版されました。本書の執筆者らは、日米両国で看護教育を受けた大学教員、英語圏で看護職として働いた経験者、そして看護英語専門教師らであり、日本の医療現場で行われている基本的な看護業務を英語で表現できるように、全ての章が実践的に書かれています。
最大の特徴は、看護師目線で書かれていることだと思います。看護は患者との出会いの瞬間から始まります。英語表現を自然な形で学べるように、第1章(Chapter1)では、患者への挨拶や案内の仕方から始まる初対面での英語表現を、相手の言うことがわからない時の聞き返し表現も含めて、相手を尊重したコミュニケーションが成り立つ英語表現として学んでいけるようになっています。特に、第5章(Chapter5)では、英語で説明する時に戸惑う病棟内オリエンテーションの英語表現について取り上げられています。患者が入院生活を送る上で大切なオリエンテーションですから、大変役立つ内容といえます。
テキストとして利用できる点は、各章に学習目標が掲げられ、その目標が達成できる仕組みになっています。日本語の英訳でなく、英語圏で暮らす人に通じるように、まず初めに語彙の確認がきています。カタカナ言葉は英語として通じないことがあります。よく使う「ナースコール」は、「Call Button」と言わないと通じないでしょうし、洗面介助時の「ガーグルベース」は、「ベース」でなく「ベースン」であり、「Emesis basin」と言わないと意味を成しません。
英語習熟を促進させる方法として、付属のCDでリスニングができるようになっています。実際の英会話は耳と目(相手の表情)で行われます。耳で英語発音に慣れることは、実際の場面で大変役立ちます。CDは、男性・女性双方の声で、ほどよいスピードで流れているので、ゆっくり内容をおさえることができそうです。発音がきれいなことも何度も聴ける秘訣かもしれません。このCDを毎日聴くだけでも、相当の効果がありそうです。リスニングに続いて、リーディング、ライティングの学習セクションがあり、ここでも興味関心が沸く内容で構成されています。以上のように、本書は異文化を意識した英語表現へのモチベーションアップが強く刺激される驚くべき構成に仕上がっています。この本を手にとった看護師や看護学生の皆さんはきっと、たとえ不慣れでも、実際の場面で、患者と英語でコミュニケーションしたいと思うことでしょう。看護系大学、看護専門学校における英語教育の教材だけでなく、とくに病棟勤務の看護師や看護留学を考える皆さんの必携書として是非お奨めしたい本です。
看護学博士・看護教育学修士
佐久大学看護学部・佐久大学大学院教授