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上尾市医師会上尾看護専門学校<学校インタビュー>
~学生のモチベーションアップを実現するために「英語」授業を「看護英語」授業へ~

IPECが推進する看護英語教育は、「日本の医療現場において基本的な看護業務を英語で運用できる看護師を養成する」ことを目的としています。これからの日本の医療現場で活躍する看護師を養成する看護学校の代表の方々に看護教育の中の「看護英語教育」についてお話を伺いました。

スペシャルインタビュー

上尾市医師会上尾看護専門学校 専任副校長 前田 久恵先生

IPEC: 貴校の教育方針、理念についてお聞かせください。

前田先生: 本校は1989年の創立で、今年度(2025年)で開校37年目となります。
教育理念として「人々が健康な生活を営むために必要な地域医療の担い手として活躍できる質の高い看護師の育成」を掲げています。

IPEC: 貴校が実践されている看護教育の特徴についてお聞かせください。

前田先生:

①地域に根付いた看護教育
本校では、3年間を通じて地域と連携した教育を行っています。たとえば、近隣の団地にお住まいの独居高齢者の方への見守り訪問活動や、地域住民の方々と共に避難所の設営を体験する災害看護演習などを実施しています。こうした地域とのつながりを通じて、学生たちが地域と共に学び、人々の暮らしに寄り添う看護を実践する力を育むことを大切にしています。

②アクティブラーニングによる主体的な学びの促進
学習効果を高めるために、アクティブラーニングを重視した授業を展開しています。具体的には、グループワークを通じて、「事例を通して考える学び」に取り組んでいます。地域の方々と関わりながら、「どのような姿になってほしいか」といったビジョンやゴールを設定し、その実現のために自分たちに何ができるのかを主体的に考えて行動するような取り組みです。

本校は年齢層が幅広く、社会人経験を持つ学生も多く在籍しています。そのため、グループワークではさまざまな視点や経験が共有されます。18歳の学生には想像しにくい40代の視点や、社会人経験から生まれる意見など、異なる立場や人生経験を持つ学生同士が意見を交わすことで、学生の理解がさらに深まっていくのを実感しています。

③シミュレーターを活用した実践的な学習
本校は、今年度、厚生労働省が推進する「看護現場におけるデジタルトランスフォーメーション効果検証事業」の実施団体として採択されました。これまでもシミュレーターは導入していましたが、今回の採択により、よりリアルな臨床場面を想定した講義の実施が可能となりました。たとえば、不整脈がある患者さんのバイタルサイン測定や肺炎患者さんの呼吸音の確認、泣き止まない乳児への声掛けなど、学生同士の演習では体験できないような、具体的かつ臨床に即したシチュエーションを学ぶことができるようになります。今後は、ICT技術を活用した実践的な看護教育の展開が期待されます。

④多学年交流を通した学生相互の学び合い
1学年4~5名の学生を教員1名が担当し、1年生から3年生までが参加する交流を通じて、学年間のつながりを深めています。年に4回程度、定期的な面談の機会を設けて、「勉強の進め方」「学生生活で困っていること」「看護実習前の準備」など、さまざまな相談をすることができます。先輩へ実習経験を聞けることや直接相談ができることは、後輩にとって大きな励みになっています。また、自然と相手に合わせた言葉づかいや適したコミュニケーションの取り方も身につけることができています。

⑤他分野の大学や専門学校の学生とのコラボレーション授業
本校では、他分野の大学や専門学校の学生と共同で学ぶ授業を実施しています。異なる分野で学ぶ学生たちと意見を交わすことで、看護に対する新たな視点を得ることができ、看護の大切さやその役割の重要性について改めて考える貴重な機会となっています。

IPEC: 貴校がお考えになる看護師像について教えてください。

前田先生: 看護の在り方も進化する中、社会や地域から求められる看護師像も変化しています。本校では、知識や技術を持つだけでなく、「看護とは何か」を深く理解し、自らの言葉で語り実践できる人材の育成を目指しています。地域で暮らす人々の意思を尊重し、その人らしい生活を支える力、目の前の状況を的確にアセスメントし判断できる力、そして、その人の暮らしを他職種と連携しながら支える中で、「看護とは何か」を自分なりに捉え、語り、行動できる力を持つことーこれこそが、これからの社会で求められる看護師の姿ではないかと考えています。

そのため本校では、実習後「合同カンファレンス」を、3年間で4回実施しています。このカンファレンスでは、学生が自身の実習経験をもとに、「看護とは何か」を自分の言葉で語る機会を設けています。

自らの考えを言語化することで、将来の指針となる“自分の軸”が育まれると考えています。看護師になったあと、日々の多忙な業務の中で迷いや戸惑いがあったとしても、「自分が考える看護」を持っていることで、立ち止まり、看護の本質を見つめ直す力になるのではないかと考えています。

IPEC: 貴校の英語授業についてお聞かせください。

前田先生: 本校では、2年次に英語Ⅰ、3年次に英語IIの授業を学ぶカリキュラムになっています。英語Iの授業では基礎的な医療専門用語と看護の場面で使える表現の修得、英語IIの授業では実際のコミュニケーション場面を想定したより実践的な学習を行っています。

IPEC: 今年度、英語Iの講義をご依頼いただきましたが、経緯や理由をお聞かせください。

前田先生: 私自身も看護師として働いていた際に、実際に外国人患者さんが来院されたことがありました。その方は痛みの度合いについて訴えていました。私が看護学生時代に受けた英語の授業は、医療について知識がある先生が担当していました。その授業の中で痛みの度合いに関する表現を学んでいたおかげで、患者さんの訴えを英語で理解することができ、タッチングなどのケアにつなげることができました。このとき、「学校で学んだ英語が実際に役に立った」と実感しました。
このような経験から、本校の学生たちにも、将来臨床の現場に出たときに、外国人患者さんに声をかけてみたり、自分から何か伝えてみたりしようとする気持ちを持ってもらえるよう、英語をより身近に感じてほしいと考えるようになりました。

そんな折、インターネットで検索していた際に、IPECのホームページを見つけました。看護英語テキストの内容が実際の臨床現場で出会うような場面を取り上げていること、そして看護師の資格を持つ先生が英語を教えていらっしゃることに大変魅力を感じました。また、私の思いと重なる内容がホームページに掲載されているのを拝見し、ぜひこのテキストを活用した講義をお願いしたいと思いました。

IPEC: ありがとうございます。私達もこのテキストは看護師の皆さんに看護の現場で使える基礎的な英語力を身につけて欲しい、という思いから作成しています。外国人患者さんたちの助けになっていただければ看護教育に携わる私たちも嬉しいです。

IPEC: 今後の取り組みについてお聞かせください。

前田先生: 本校では、英語に限らず、実践に近い形で体験を通じて学ぶ機会を大切にしています。学生たちは、教科書だけでは得られない“言葉にならない学び”を、日々の授業や多様な人々との関わりの中で身につけています。

近年、近隣の団地でも外国人の方が増えており、今後は外国人患者さんと接する機会もさらに増えることが予想されます。

英語の授業についても、今年度の取り組みを振り返りながら、今後さらに内容を充実させ、より実践的で効果的に学べるよう発展させていきたいと考えています。

私達も、より看護業務で使える看護英語の授業をご提供ができるよう努力をして参ります。
本日は、取材にご協力いただき、ありがとうございました。

※上尾看護専門学校の「英語Ⅰ」の授業講義は、IPEC監修のもと、教育提携をしているILC国際語学センターが受託しました。

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