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【新型コロナウィルスへの対応】 ~9日間で完成した専用病院~

【海外の看護現場から】

4月の初め、ロンドンに新型コロナウィルス患者専用の仮設病院がオープンするというニュースをご覧になった方も多いと思います。その名もNHSナイチンゲール病院ロンドン(NHS Nightingale Hospital London)。ExCelという、ロンドンオリンピックの柔道や卓球の会場(私も柔道を見に行きました!)として使われたイベント施設を改装し、たった9日間で病院に作り変えたことは日本でも大きく取り上げられました。その規模は4,000床。日本の大病院と呼ばれるものがだいたい1,000床前後ですから、その4倍です。東京都も同じ4,000床を確保目標にしていますが、今はホテルなどに軽症者を移動させることで対応していますね。ロンドンはそれを一か所で集めるという全く違うアプローチをとりました。更にこの病院は、感染者なら誰でも受け入れるわけではなく、人工呼吸器が必要な患者を対象としているのです。その内部がどのような様子なのか、BBC Onlineの4月9日付の記事*1 に詳しく載っていましたのでご紹介します。(詳しい写真やイラストは、文末の出典元のウェブサイトで是非ご確認ください。)

まず、病院入り口にAmburance Control Area(救急車の車寄せ)があります。病院内に入ると、まず最初にあるのがMortuary(死体安置所)です。その横のControl Room(病院の管理室)を過ぎると、Admission Area(入院患者を受け入れるエリア)になります。ここで、患者の重症度を見極めるTriage(トリアージ)が行われるのでしょう。そこから先は4000 Intensive Care Beds(4,000床の集中治療用の病床)のエリアに入り、患者が各病棟に振り分けられていくわけです。そして、人工呼吸器の治療が終わった患者は、更に先のRecovery Area(回復期エリア)、Discharge Area(退院エリア)と移動していきます。

要するに、この病院では患者が回復するにしたがい、一方通行で退院エリアに向けて移動していくのです。逆方向への移動はMotuaryへとなるわけで、すなわち死を意味します。回復期にある患者のウィルス暴露を減らすためと思われますが、現場の厳しい状況が目に浮かぶようです。

ベッド周りの配置も非常に興味深いです。各ベッドの間には腰の高さの仕切りがあり見本市のブースのようになっています。その中の配置は敷地内のどのベッドでも同じで、どこの誰がスタッフとして来てもすぐに働けるようにとの配慮がなされています。

ベッドの右側には、

  • Ventilator(麻酔用の人工呼吸器)
  • Electronic Patient Record(EPR;記録用の端末)
  • Drip Stand + Feeding Pump(点滴スタンド+経腸栄養ポンプ)
  • Clinical Waste(医療廃棄物容器)

左側には、

  • Monitor(心肺モニター)
  • Suction(吸引)
  • Drip Stand+Infusion Pump(点滴スタンド+輸液ポンプ)
  • Consumable Trolley(消耗品のワゴン)
  • Sharps Bin(針専用の廃棄箱)

が置かれています。

等間隔で同じ配置のベッドや人工呼吸器などが一面に並ぶさまは、圧巻としか言いようがありません。

4,000床ともなると、必要な医療スタッフも膨大で、16,000人だそうです。各病院からの志願者を募るとともに、民間団体であるSt. John Ambulance(救急隊)からのボランティアと、民間航空会社のキャビンアテンダント(CA)たちで賄うとしています。だだし、CAは患者のケアに直接関わるわけではなく、シーツ交換などの補助的作業を行うのみということなので、果たして4,000床のICUに足りる医療スタッフを集められるのか、不安が残ります。

私の元同僚の中にも、この病院に志願するする人たちが出始めました。新型コロナウィルス感染による死者がどんどん増え続けているイギリス。この病院が満床になることなく事態が終息に向かうことを祈らずにはいられません。

出典: *1  BBC 9 Apr 2020 https://www.bbc.com/news/health-52125059

ブログ執筆者

吉濱 いほり
英国・日本看護師、英国看護学士

日本で看護短期大学を卒業後、病棟勤務を経て渡英。Supervised Practice Program (現在のOversea Nurses’Program)を履修し、英国看護師としてNursing and Midwifery Councilに登録。脳神経外科・内科病棟に勤務しながら、City, University of Londonにて看護学士(BSc Hons)を取得。National Health Serviceの病院で14年間勤務後、 2019年に帰国。