新型コロナウイルスは、登場してから毎日トップニュースになっていますが、今回はこの新型コロナウイルスに因んだ英語・用語のお話をしたいと思います。
まず、新型コロナウイルスはnovel coronavirusといい、novelは「新しい」、coronavirusはそのままで「コロナウイルス」を意味します。ここで気をつけたいのは発音です。coronaは「コロナ」でいいのですが、virusは「ウイルス」ではなくて「ヴァイラス」と発音します。
日常的な会話の中では、みなさん”coronavirus”と言っている人が多いです。これは今までにも存在してきたウイルスの一般名称ということは広く知られていますが、それでも今では、”coronavirus”というと新型コロナウイルスのことを指しているという理解で問題ないでしょう。
新型コロナウイルス感染症という英語も今ではかなり周知されていると思いますが、これは英語ではCOVID-19と言いますよね。この名称は単語の一部分、すなわち、CO(corona), VI(virus), D(disease), ‐19(2019年に発見されたことから)をつなげて、WHO(世界保健機関)によってつけられました。このCOVID-19という名称はアメリカのニュースを見ていても結構使われていますし、日常会話の中でも使う人もたくさんいます。
意外と知られていないのがSARS-CoV-2という名称です。これはどちらかというと学術的に使われている傾向があります。SARSはSevere Acute Respiratory Syndrome(重症急性呼吸器症候群)の略で、2003年に中国を中心に流行したコロナウイルスによって引き起こされた病気のことを今までは意味をしていました。しかし、今回の新型コロナウイルスもSARSを引き起こすコロナウイルスだということが判明しているので、2003年から数えて2番目ということでこの名称がつけられています。
名称についてまとめると、novel coronavirusとSARS-CoV-2はウイルスのことを指し、COVID−19はそのウイルスによって引き起こされる病気(感染症)ということになります。日常会話で使うときは “coronavirus” でも “COVID ” でも十分理解してもらえます。
また、この新型コロナウイルスに対する感染予防策の代名詞として知られるようになったものの一つに、 social distancing というものがありますよね。この用語も今まであまり耳にしないものでしたが、感覚的に理解が難しいものではなかったので一気に普及しました。アメリカでは、”Please practice social distancing” といったように呼びかけがされるようになりました。日本では social distanceの方が一般的になっていますが、英語では「感染予防対策」としての意味での正式の用語はsocial distancingといいます。決してsocial distanceでも間違いというわけではないのですが、実はこの用語には他にも意味があります。
元来、social distanceとは社会学で使われる用語で、1つの同じ社会の中で、人種や働く業界、宗教などが異なる人と人の間に存在する目には見えない「距離」のことを指すようです。今では新型コロナウイルスの問題で、social distancingまたは、social distanceのどちらを使っても、同じ「人と人との間に物理的な距離をおく」意味として受け入れられています。日本では一般的に2mほどと言われていますが、アメリカなどでは「6フィート」(約1.8m)と言われています。
アメリカでは、最近はdistancingなのかdistanceなのかという議論より、social(社会的)よりphysical(物理的)と言ったほうがいいという人も増えています。語感からsocial distancingというと、人と人とのつながりを否定するようなネガティブなイメージとして捉える人もいて、物理的に離れていても人とのつながりを諦めてはいけない!と呼びかける人もいます。現にWHOではあえてphysical distancingを使っています。
日本ではこの新型コロナウイルスの政策などの名称で「なんでもカタカナにするな〜」という抗議は聞きますが、そこまで単語・用語の意味やニュアンスの違いなどを指摘する傾向はあまりみられないように思います。名前をカタカナにしてしまっていることにより、逆に疑問を持たないのかもしれませんね。
橋本実和(米国・日本看護師、米国看護学士)IPEC看護英語教育アドバイザー
アメリカ・カリフォルニア州のCommunity Collegeで看護教育を経てAssociate Degree in Nursing(ADN)を取得。NCLEX-RN合格後、バークレー市内の病院のがん・血液科病棟にて病棟ナースとして5年間従事。その間にカリフォルニア州立大学にて看護学士を取得。帰国後、IPEC看護英語専任教師として活躍しながら、日本の看護師免許を取得。現在はインターナショナルスクールのスクールナースとして働きながら、IPEC看護英語教育アドバイザーを務める。
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