アメリカの「麻薬文化」を映画やドラマなどを通してご覧になったことがある方は多くいらっしゃると思いますが、これは「ハリウッドの世界」にとどまることではありません。実際に私もサンフランシスコ周辺で街を歩いていて「あ、マリファナの匂いだ」と感じることはよくありました。
現在、カリフォルニア州ではマリファナ(いわゆる大麻)は合法化されています。しかし、合法化前でもそのような状況に出くわすことがあったのですから、自分自身が使用者でなくても、アメリカで生活していると「普通」のことなのです。
これは医療現場でも同じです。
同じ、というよりは一般の人よりは麻薬使用者に出会うことが多いでしょう。こういった状況なので、入院するときの問診の質問の一つに「Do you use recreational drugs?(嗜好用薬物は使用していますか)」というものがあります。これは「Do you smoke?(タバコを吸いますか)」や「Do you drink alcohol?(お酒は飲みますか)」を聞く感覚と同じです。
先ほども言いましたが、マリファナが合法化されている州はアメリカの中ではいくつかありますが、一般的に嗜好用薬物の使用は違法です。それでも意外と患者さんは素直に「コカイン」や「ヘロイン」などの使用について正直に教えてくれることもありました。
また、ふと思い浮かぶのは、担当患者さんの情報取集をしている時点でその患者さんが“IVdrug user”(静注薬物使用者)であるとわかった時の静脈の状態です。薬物中毒になってしまっている人は、腕の静脈がボロボロになってしまうまで繰り返し使います。そのため、入院した時に静脈へのアクセスに困ることがありました。
採血も静脈ラインを挿入するのも一苦労です。あまりにひどい人は、簡単な点滴をするのにもCVラインを入れないといけない患者さんもいました。アクセスできる静脈を使い果たし、もうそれ以上静脈から注射するところがなくなると、腕や脚に皮下注射で麻薬を使う人もいます。このことを”skin popping”といいます。皮下注射の方が薬物の体内への吸収が遅いため、敢えて過剰摂取の可能性を低くする目的でこの方法で麻薬を打つ人もいるようです。
想像ができる方もいらっしゃるかと思いますが、この方法を使う人の腕や脚の状態はひどいもので、蜂巣炎を起こしてしまう人もいれば、膿瘍まで悪化してしまう人もいます。この段階になるとかなりの重症だということはお分かりだと思います。このような人生を送っている人は結構いるのだな、と感心している場合ではないのですが、そう感じることはありました。マリファナくらいなら吸ったことある人は周りにいたりしましたが、ここまで「薬物乱用」の生活にのめり込んでしまっている人には、医療現場でないと会わないのかなと思いました。
最後に、あくまでもアメリカの事情であり、ブログ執筆者の体験談です。
橋本実和
(米国・日本看護師、米国看護学士)
IPEC看護英語教育アドバイザー
アメリカ・カリフォルニア州のCommunity Collegeで看護教育を経てAssociate Degree in Nursing(ADN)を取得。NCLEX-RN合格後、バークレー市内の病院のがん・血液科病棟にて病棟ナースとして5年間従事。その間にカリフォルニア州立大学にて看護学士を取得。帰国後、IPEC看護英語専任教師として活躍しながら、日本の看護師免許を取得。現在はインターナショナルスクールのスクールナースとして働きながら、IPEC看護英語教育アドバイザーを務める。
看護学生・現役看護師の方々からの強いご要望にお応えして、実践的な英語コミュニケーション力を習得できる 「看護英語テキスト」を作成しました。
看護・医療系学校の英語授業、医療機関の英語研修でご活用いただいております
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