今回は英語フリーペーパー(無料新聞・雑誌)を使って私が行った英語学習法をご紹介します。
私が就職後に通い始めた英会話クラスでは、時々英語フリーペーパーの記事を使うことがありました。当時フリーペーパーはまだ珍しいものでしたが、アメリカ人の先生は「アメリカには無料の雑誌や新聞がたくさんある」と話していました。その後私がカナダに住むようになったとき、実際にトロントの地下鉄駅には毎朝無料新聞が置かれていました。
今では日本でも英語のフリーペーパーを見かけることが多くなりましたが、その頃私が日本で読んだフリーペーパーは外国人向けの生活情報誌でした。すべて英語で書かれており、全面フルカラーで写真やデザインもセンスがよく、とても無料とは思えないクオリティでした。内容としては、イベントや映画、展覧会、書評、レストラン、雑貨、街の紹介など、幅広いジャンルを扱っていました。
この雑誌を読んでとても面白いと思ったのは、編集者やライターがほとんど英語ネイティブで、そのような人たちが記事を書いているので、自分が行ったことのある場所や習慣的に行っていることなどを、いつもと違った視点で見られることでした。日本を外から客観的に見ることができ、「へえ~、他の国ではそれは普通じゃないんだ」といった目からウロコの発見がたくさんありました。そうした気づきは、国際的な感覚を磨くことに役立つのではないかと思います。
また、お店の紹介記事などでなかなか辛口なコメントが書いてあったりして、これも日本の雑誌と違って面白いと感じました。今はブログやSNSで自由な意見を発信するのが普通の世の中ですが、当時、雑誌や新聞で否定的・批判的な内容を見ることは少なかったように思います。そんな中、書き手のストレートな意見を読むことは目新しく、小気味の良いものでした。また、そうした批評は読んでいて決して気分を害するものではなく、やんわりとした書き方や表現が使われていました。ネガティブな内容を穏便に伝えるのは、日本語でも難しいものです。そういった英語表現を学べる機会はなかなかないので、このフリーペーパーはとても役に立ちました。
それから、レストランの記事で食事のメニューや食材の名前などもよく覚えました。例えば、「定食」は「set meal」、「チキン南蛮」は「deep-fried chicken thigh with a creamy tartar sauce」*など、日本にあって外国にないメニューなどは、覚えておくと便利です。
さらに、広告も学習素材になります。フリーペーパーは広告収益で成り立っているため、多数の広告が掲載されています。英語フリーペーパーは広告もすべて英語なので、これを使わない手はありません。TOEICという英語試験がありますが、この試験はビジネスシーンを含む英語のコミュニケーション能力を測るものなので、チラシや新聞広告などを使った問題がよく出題されます。フリーペーパーの実際の広告を使って、宣伝や案内に使われる表現や、狭い紙面で効果的にPRする表現などを学べば、TOEICのスコアアップにもつながると思います。ちなみに、「admission」は「入院」などの意味がありますが、「admission free」と言った場合は「入場無料」の意味になります。
外から見た日本や在日外国人の間のトレンドなどの理解を深めながら、英語学習にも1冊まるまる活用できる英語フリーペーパー。今はオンラインで閲覧できるものも多いので、ぜひ一度お試しいただければと思います。
*出典:メトロポリス 2019年12月号
久々宇 悦子(カナダ看護師、日本看護師・保健師)
日本で看護大学卒業後、国内で病棟勤務を経てカナダ渡航。独学でカナダ看護師試験(Canadian RN Exam)に合格、看護師免許取得。就労ビザ取得後、トロント市内の地域基幹病院に入職し、外傷・脳神経外科ICUにて看護師として2年間勤務。帰国後、 看護職能団体にて看護労働や学会事業等に従事。
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