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【新型コロナウィルスへの対応】 イギリスの看護師たちの今

【海外の看護現場から】

3月23日に外出禁止令が出たイギリス。いまだに感染者は増え続け、死者も2000人(4月1日時点)を超えました。チャールズ皇太子や、ボリス・ジョンソン総理大臣などの要人が検査で陽性となったニュースは日本でも大きく取り上げられました。

私は昨年までロンドンのNational Health Service(NHS)の脳外科病棟で働いていたので、今現在、この新型コロナウィルス騒動の最前線で働いている元同僚が多くいます。

Intensive Care Unit(ICU)で働くナースのフィオナ(仮名)は、”I feel like I’m working in a sea of intubated patients!” 「まるで、挿管した患者たちの海の中で働いているようだ」と言っていました。病院は緊急以外の手術を中止して、出来る限りのICU病床を確保しようとしています。陰圧システムのある手術室はICU病室に転用し、手術後の患者さんを看るリカバリー室も一部はICU化しているとのこと。それに伴い、病棟で働く看護師たちが、ICUやAccident and Emergency(A&E→イギリスではERのことをこう言います)に回されているようです。フィオナはICUのTeaching Nurse(教育担当看護師)なのですが、今はICUのナースにではなく病棟の看護師たちに人工呼吸器の取り扱いを教えていると言っていました。

NHSは、今までもEU離脱や予算削減でスタッフ不足が叫ばれていましたが、ここにきて新型コロナウィルスによる自主隔離などで事態はさらに深刻化しています。イギリスの看護師登録は3年ごとの更新制なのですが、登録を管理するNursing and Midwifery Council(NMC)は、登録を中断している、もしくはすでに抹消して引退した看護師や助産師たちにNMC’s COVID-19 temporary register(COVID-19臨時登録)をして、すぐに現場に戻るよう働きかけています。今は総合病院を辞めて、General Practitioner(GPーかかり付け医)のクリニックに転職した元同僚には、NMCから最前線で働ける人の募集メールが毎日のように来ているようですが、幼い子供がいる彼女は躊躇していると不安げでした。

そんな医療従事者たちを助けようと、イギリス社会が動き出しました。シフト制で働く病院関係者が、仕事の後に何も食べるものがないとSNSで訴えたことから、ほとんどのスーパーマーケットチェーンでは医療従事者だけが中に入って優先的に買い物ができる時間を設けました。病院のIDカードを見せると飲み物が無料になったり、テイクアウトの食べ物が割引になったりする店も多数あります。さらに、外出禁止令のなか通勤しなくてはならないスタッフたちに、自転車メーカーが無料で折りたたみ自転車を貸し出したり、都市部に整備されているレンタサイクルが無料で使えるようになったり、公共交通機関を使わないで済むよう配慮がなされています。車で通勤する人には病院近くの駐車スペースが無料ですし、遠方に住むスタッフには民泊を経営する企業が無料で泊まる場所を提供したりと、様々なサポートが導入されています。

また、新型コロナウィルスと戦う最前線のスタッフたちに感謝の気持ちを贈る”Clap for Carers”というムーブメントが起こりました。木曜日の夜8時に、自宅にこもる市民たちが一斉に外に向けて拍手をするのです。ニュースやYouTube等でも映像がたくさん流れており、その光景は本当に感動的でした。前述のスーパーマーケットでも、店内に入るスタッフたちに店員が拍手を送りながら花束をプレゼントしていました。最前線で働くスタッフたちに社会全体が敬意を表しているのが感じられます。私も、遠い日本から、必死で頑張っている元同僚たちにエールを送りたいと思います。

出典:

The Guadian 20 March 2020
https://www.theguardian.com/uk-news/2020/mar/20/london-hospitals-struggle-to-cope-with-coronavirus-surge

NHS England
https://www.england.nhs.uk/coronavirus/returning-clinicians/nmcfaqscovid19/

Evening Standard 2 April 2020
https://www.standard.co.uk/news/health/clap-for-carers-nhs-staff-appeal-coronavirus-a4404726.html

ブログ執筆者

吉濱 いほり
英国・日本看護師、英国看護学士

日本で看護短期大学を卒業後、病棟勤務を経て渡英。Supervised Practice Program (現在のOversea Nurses’Program)を履修し、英国看護師としてNursing and Midwifery Councilに登録。脳神経外科・内科病棟に勤務しながら、City, University of Londonにて看護学士(BSc Hons)を取得。National Health Serviceの病院で14年間勤務後、 2019年に帰国。