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まさか、私の病院に中国人患者がくるなんて・・・

私が日本に戻り、地元の熊本県八代市(人口12万人:2017年統計)にある田舎の病院で働き始めて3ヵ月が経つ頃でした。 外国人といえば、農業のお手伝いをするベトナム人やカンボジア人、中国人の労働者と中国人の観光客を時々見かける位で、実際に病院ではほとんど見かけませんでした。 ところがある日、63歳の中国人男性が緊急入院してこられました。家族3人で豪華客船での旅行中に船の中で脳出血を起こされ意識不明となり、八代港から一番近い当院に救急搬送されました。 すぐに手術を受けられ、ICUに2泊した後、脳外科病棟に転棟するという情報が入りました。

まさか、私の病院に中国人患者がくるなんて・・・

病棟はパニック、家族も不安・・・

病棟の看護師達は「えー、どうしよう!でも、病院のiPadに入っているアプリを使えばいいか。後は森本さんがいるから。」と、不安な気持ちでいましたが、それ以前に業務に追われてアプリを操作する時間もなかったのが現実です。 ICUに迎えに行き、患者と共に病棟に来た看護師達から「森本さん、家族と話ししてください、何だか色々言われるのですがわからなくて。不安そうです。」と言われ、患者の長女とそのご主人を探しました。 他の看護師達は医療英語のアプリを起動させようとしましたが起動せず、パニックになっていました。 私は自分の自己紹介をして家族に話を伺いました。家族の第一声が「よかった、英語が話せる看護師さんがいてくれて。」でした。

その後、入院費用の事、入院期間の事、飛行機で中国に帰れるのかどうかなど、次から次へとあふれるように質問がきました。その質問に対し、看護師として答えられる範囲で説明し、後は聞きたい事をメモにまとめて主治医との病状説明の時に確認してもらうよう話しました。 家族の顔からやっと笑顔が見られました。その後、中国語を話せる日本人通訳者を自ら手配されたりして、主治医からの病状説明の際にはわからない事がないよう準備されていました。

英語を話せる看護師の役割

まず、病院側からは「クレジットカードのリミットは大丈夫か?一度に高額な金額をカードで払えるのか?」と何度も私に説明してくれと言われました。 また、会計の内容の説明、それに対する家族からの質問にも何度も対応しました。やはり、保険がないと10割負担で既に100万単位の額になっている入院費用を払えるかどうかは、病院側としては問題となってきます。 また、家族もどんな項目でいくらかかっているのか日本語で書いてある明細は理解できません。 幸い、その家族は金銭面では余裕がある家族でしたので、支払いのトラブルは何もなく終わりました。後は、医師との日程調整や日々の医療関係者(看護師、理学療法士、言語療法士)から、患者の状態についての説明を家族に通訳したり、逆に家族にこちらから質問したりしました。 例えば、食事中に患者に声かけをする際の「かんで。飲み込んで。」などの言葉は中国語ではどう言うのですか?などです。患者は、手術後も失語があり、発語がなく頷きだけでの意思表示でした。 右麻痺が残り、全介助を要するレベルでした。やはり大変なのは看護師です。家族がいる時は何とかなりますが、いない時には片言のメモに残してある中国語と英語をまぜて話しかけて対応していました。 正直なところ、質問に対し理解されているのかどうかわからず、手足の麻痺の程度をみる時にどう説明すればいいのか、便意・尿意があるのかどうかなど把握できず、家族を通してなんとか状態を把握して、看護記録を書いている日々でした。 食べ物もアレルギーはないのか、好き嫌いはないのか、食事量が少ないのは腹部症状があるためなのか、それとも日本食がまずいのかなど対応に苦戦しました。

3週間病棟に入院され、中国の病院に転院される日がきました。患者と家族に笑顔がみられ、スタッフはほっとしていました。無事に中国の病院についたことや感謝のメールをその後家族から頂き、皆でシェアしました。 今回を機に看護師達からは「医療英語の勉強をしないといけないですね。何から始めたらいいですかね。森本さん、医療英語の勉強会してください。」と、医療英語を勉強したいという意欲があふれてきました。 また、私自身は、もし医療スタッフが誰も英語が話せない病棟だとしたら、どう対応をされていたのか、また患者家族の不安はどれだけ高くなっただろうかと考えさせられました。

ブログ執筆者

森本博美
日本・ニュージーランド・カンボジア看護師

国内で看護師として病棟・外来の臨床経験を経て、保健師として保健所に勤務。その後ニュージーランドへ渡りワーキングホリデーを体験後、看護師免許を取得。クライストチャーチのPublic Hospitalの整形外科病棟に6年、老人ホームに約2年勤務。2015年から約2年半のカンボジア日系クリニックでの勤務を経て、2017年5月に帰国。 現在熊本県内の病院で看護師として活躍中。

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