新型コロナウィルスの影響で在宅勤務が増え、日本人の働き方もだいぶ様変わりしたように思います。シフト制で働く看護師にはなかなか「働き方改革」が及びませんが、それでも、日本とイギリスの看護師では働き方がだいぶ違うように思います。
まず勤務体制において、イギリスでは2交代制が主流です*1。しかし、日本でよくある夜勤の時間が長い2交代制とは違い、1日を単純に2分割して、申し送りの時間を30分加えた、12.5時間(休憩の1時間を除いた実働11.5時間)の勤務が多いと思います。これは、俗にlong-day shift(ロングデイシフト)と呼ばれます。国営のNHS病院では常勤で規定通りに働くと週に37.5時間になるので、1週間で3.25日働けばいいことになります。つまり、4週間で13日の勤務という計算です。12.5時間は長いけれど、休みが多いのは魅力です。
有給休暇を全部消化できるのは当然ですが、残業もほとんどありません。イギリスで働きだしてすぐの頃は、看護記録を書くためによく残っていたのですが、しばらくすると上司に呼ばれて「なぜ時間内に終われないのか。時間調整にもっと気を付けなさい。」と注意をされました。それまで、看護記録は自分の仕事が全て終わってから書くものと思っていたのですが、勤務の終了時間が近づいたらとにかく記録を書いて、終わっていない仕事は次のシフトに申し送るということを教わりました。それができるのも、イギリスの急性期の病院では日勤と夜勤の看護スタッフの数がほぼ一緒だからです。日本で働いていた時は、夜間は昼間のスタッフの半数以下になってしまっていたので、やり残した仕事を頼めるような雰囲気ではありませんでした。
また、子育てや介護などの理由があれば、病棟の場合は勤務をある程度自由に組んでもらえることも多いです。勤務時間を減らしたり、曜日を決めて働くのも交渉次第。私がいた病棟には、子育てをしながら毎週土曜日だけ日勤をしていたナースや、夫婦共に看護師で、妻は外来で日勤だけ、夫は病棟で月・水・金曜日の夜勤だけをして、子育てと両立させているナースもいました。実は私も、義父が病気になった時にシフトを調整してもらったことがあります。2週間まとめて働き、その後の2週間を丸々休みにして、イギリスのお隣の国であるアイルランドに行って看病をする、ということを3か月続けました。
次に、日勤において病棟で働いている看護スタッフを紹介します。
Ward Manager・・・師長
Ward Sister or Charge Nurse・・・主任(女性だとシスターと呼ばれます。)
Staff Nurse・・・看護師
Health Care Assistant(HCA)・・・看護助手(看護師とほぼ同数が勤務します。)
その他にも患者さんには直接関わりませんが、Domestic Assistantという病棟内の掃除や食事の配膳に特化した助手が日勤で働いています。
師長は、朝病棟に顔を出してその日のスタッフが足りているかを確認したら、自分のオフィスか会議に行ってしまうので、その日の病棟を仕切るリーダーがいるのは日本と同じかもしれません。リーダーはNurse in Chargeと呼ばれ、Sisterレベルのスタッフがいればその人がやりますが、Staff Nurseでもリーダーになることもあります。リーダーは日勤では患者さんを受け持たないのが基本ですが、夜勤では自分の患者さんを看ながらリーダーもする病棟が多いです。
イギリスの病棟ナースの働き方が、なかなかバラエティーに富んでいるのがお分かり頂けたでしょうか。人種や国籍が様々な人たちの中で働くのは大変な時もありますが、自分に合った働き方ができるのはイギリスの良いところだと思います。
吉濱 いほり 英国・日本看護師、英国看護学士
日本で看護短期大学を卒業後、病棟勤務を経て渡英。Supervised Practice Program (現在のOversea Nurses’ Program)を履修し、英国看護師としてNursing and Midwifery Councilに登録。脳神経外科・内科病棟に勤務しながら、City, University of Londonにて看護学士(BSc Hons)を取得。National Health Serviceの病院で14年間勤務後、 2019年に帰国。
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