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【新型コロナウイルスへの対応】COVID-19第一波を振り返る ~医療用マスクの再利用と安全性~

【新型コロナウイルスへの対応】

各国で感染再拡大がみられるなど、長期化の様相を呈しているCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)。

2020年上半期の爆発的な感染者増加では、医療現場でのPPE(Personal Protective Equipment 個人防護具)の不足が大きな問題となりました。危機的なPPE不足に対する緊急措置として、使用期限切れマスクの使用や使い捨てマスクの再利用等が推奨され、窮地を乗り越えました。

では、本来使用すべきではないPPEを使用した場合、感染は確実に防げるのでしょうか。そうした疑問を明らかにするため、マスクを再利用した際の安全性や性能を検証する研究が、各国で盛んに進められてきました。

WHO(世界保健機関)や米国CDC(疾病予防管理センター)は、COVID-19に対応する医療現場で、aerosol(エアロゾル)が発生する手技注)を行う際にN95マスクの装着を推奨しています。N95マスクは、空気感染する微粒子を95%以上捕集できる、高性能の使い捨てタイプのマスクです。

注) WHOによるaerosol-generating procedures (エアロゾルが発生する手技)の例*1
・tracheal intubation:気管内挿管
・non-invasive ventilation(NIV):非侵襲的換気
・tracheotomy:気管切開
・cardiopulmonary resuscitation(CPR):心肺蘇生
・manual ventilation before intubation:挿管前の用手換気
・bronchoscopy :気管支鏡検査

「気管」は「trachea」で、「tracheo-/trache-」は「気管の」という意味の接頭語です。同様に、「気管支の」という意味の接頭語は「broncho-/bronch-」です。「気管支」の単数形は「bronchus」ですが、左右両方にあるため、複数形の「bronchi」もよく使われます。

マスク再利用時のフィルター性能を検証したある研究結果*2によると、11年以上使用期限が過ぎた、ヘッドバンド未損傷のN95マスクを使用し、過酸化水素などで適切に除染した場合、未使用のN95マスクと同等である95%以上のフィルター性能が保たれることが明らかになりました。一方で、N95マスクでもサイズが合わないものや未承認のものは95%を満たさない場合があるため、注意が必要ということです*2,*3

CDCは、メーカーによる使用回数制限の明示がある場合を除き、マスクの再利用は上限5回までを推奨しています。何度も着脱しているうちにヘッドバンドやストラップが徐々に伸びて、顔との密着性が低下し、有害な粒子がマスク内に漏れ込む可能性が高くなってしまうからです。また、再利用の際には、使用済みのN95マスクを通気性のある紙バッグに入れて5日間以上保管してから再利用することとし、この方法が取れない場合にマスクの除染を考慮することとしています*3

COVID-19におけるマスクの除染法については、紫外線、過酸化水素、加湿熱などの方法が安全性が高いとされていますが、この場合も、くり返しの使用による材質やストラップの劣化は防げないため、着用毎のseal check(密閉性の確認)が求められます(seal checkの方法はCDCホームページ*4参照)。

ここでの「seal」は「密閉、密封」という名詞で、このほか「封印する、密封する」という意味で動詞にもなります。ちなみに、「seal」にはペタペタ貼る「シール」という意味はなく、「シール」は英語で「sticker」と言います。

こうしたN95マスクの再利用は緊急時に限った特別措置であり、現在のように十分なPPEが確保できる状況になった場合は、従来どおり使い捨てすべきとされています。また、新型コロナウイルスは未解明な部分が多いため、今後こうした対応が変更・中止となる可能性もあります。流行の先行きが見通せない中、日々更新される正確な情報に耳を傾け、最も安全かつ効果的な感染予防策をとることができるよう、備えていく必要があると思います。

ブログ執筆者

久々宇 悦子(カナダ看護師、日本看護師・保健師)

日本で看護大学卒業後、国内で病棟勤務を経てカナダ渡航。独学でカナダ看護師試験(Canadian RN Exam)に合格、看護師免許取得。就労ビザ取得後、トロント市内の地域基幹病院に入職し、外傷・脳神経外科ICUにて看護師として2年間勤務。帰国後、看護職能団体にて看護労働や学会事業等に従事。

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