一般に「ナース」と聞くと、病院の病棟で働く看護師、または街のクリニックで働く看護師を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。しかし看護師という職をひとつとっても日本でも色々な分野、また色々な役割で働く看護師が多いですよね。
アメリカではAdvanced Practice Nursing(高度実践看護)という制度がかなり確立されていて、看護師としてある程度経験を積んでから大学院に入り、専門性を高める人が多いです。中には初めから修士課程レベルの看護師を目指せるプログラムもありますが、そのようなプログラムでもまずRegistered Nurse(RN)としての教育を受けることが前提です。
ナースプラクティショナー(NP)は、日本でも認知されてきているようですが、アメリカでは色々な専門分野で活躍しています。NPの職務範囲は各州の看護審議会で定められていますが、一番自主性が発揮できるところは、NPが自身でクリニックを開業し、患者さんを診察し、診断をした上で治療方針を決め、薬なども処方することができる点です。ただ、ほとんどの場合、開業医の監修のもとでこれらのことをするのが一般的のようです。「アメリカでは NPは医師と同じことができる」というのはごく限られた州でのことです。
あまり一般的に知られていないところでForensic Nursingという分野があります。日本では法看護と和訳されたり、またはフォレンジック看護とも呼ばれます。これを専門として活躍するナースは、例えば病院の救急治療室で働いていることが多いようです。そこで、犯罪による被害者のケアをしながら証拠集めをします。性的暴行を受けた患者さんからレイプキットというものを使って証拠を集めたり、怪我の状態の写真を撮ったりします。また、「ただの怪我」で来院した患者さんが、その怪我が家庭内暴力によるものかもしれないと疑わしい場合は、アセスメントをし、警察などと連携して対応します。他にForensic Nurseが働く分野として、検視官とともに変死体の解剖に関わる看護師もいます。Forensic Nurseになるには、修士課程も存在するようなのですが、特定の講習や実習を修了したり、認定試験に合格してなるという方法もあるようです。
Legal Nurse Consultingという分野もあります。この分野を専門として活躍するナースは、例えば、医療関連の裁判の案件に、看護師がコンサルタントとして参加します。Legal Nurse Consultantは弁護士のチームに依頼され、医療の専門家として案件に関わるカルテを読み、患者さんの怪我や病気の状態などを調べて弁護団にわかりやすく説明します。また裁判に向けて他の医療従事者や目撃者にインタビューをしたり、情報を集める役割も果たすようです。時には裁判で医療の専門家として証言をしたり、裁判官や陪審員に医学用語や医療行為の説明をしたりもします。Legal Nurse Consultantとして成功しているナースは、自身でコンサルティング会社を立ち上げる人もいるようです。Legal Nurse Consultant になるために、特に修士課程 は必要はないようなのですが、専門の教育プログラムは存在するようです。専門分野でRNとして経験を積み、認定試験を受けるのが一般的のようです。
他にも様々な専門分野で働くナースはいるのですが、とりあえず今回はここまで。「Nurse」と言っても奥が深い職業ですね。
橋本実和
(米国・日本看護師、米国看護学士)
IPEC看護英語教育アドバイザー
アメリカ・カリフォルニア州のCommunity Collegeで看護教育を経てAssociate Degree in Nursing(ADN)を取得。NCLEX-RN合格後、バークレー市内の病院のがん・血液科病棟にて病棟ナースとして5年間従事。その間にカリフォルニア州立大学にて看護学士を取得。帰国後、IPEC看護英語専任教師として活躍しながら、日本の看護師免許を取得。現在はインターナショナルスクールのスクールナースとして働きながら、IPEC看護英語教育アドバイザーを務める。
看護学生・現役看護師の方々からの強いご要望にお応えして、実践的な英語コミュニケーション力を習得できる 「看護英語テキスト」を作成しました。
看護・医療系学校の英語授業、医療機関の英語研修でご活用いただいております
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