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【Nursing English in Action】Chapter10 退院時の指導:Nurse Case Manager

【Nursing English in Action】Chapter10 退院時の指導: Care Transitions Interventions Program

アメリカの病院には、ケースマネジメントという部署があります。ここでは入院患者さんのために退院に向けての計画とそのコーディネートが行われます。この部署で働いている人の多くはNurse Case ManagerもしくはLicensed Clinical Social Workerです。Nurse Case Managerは看護師資格を持つケースマネージャーのことで、ある程度病棟などで看護師として働いた人がケースマネージャーという仕事に転職する形になります。Licensed Clinical Social Workerは臨床ソーシャルワーカーで、入院患者さんの中でも精神障害や麻薬中毒の問題を持つ人や、ホームレスなどの患者さんのケースマネージャーになることが多いそうです。

一般に、患者さんが持つ医療健康保険の種類によってどの施設でどこまでのケアが受けられるのか、などが異なるため、退院計画が複雑になるようです。特にSkilled Nursing Facility(高度看護施設)や Nursing Home(老人ホーム)への入所が必要な患者さんの受け入れ先を確保するのは大変なようです。私の友人で15年以上病棟看護師をしてからケースマネージャーへ転職した人がいるのですが、施設との日々のバトルがどんなに大変か聞かされました。毎日のように施設に連絡をしてベッドが空いてるかを確認をする作業があるようで、施設側も「お金になる」患者でないとなかなか受け入れてくれないとのことです。同じベッドを「占拠」するにも、長期になってもあまり医療行為を必要としない患者さんはそれほど施設の収入にならないらしく、そのような患者さんの受け入れ先を探そうとしてもなかなか見つからないのに、その後に短期であっても高度看護施設で医療行為の必要な患者さんの情報を送ると同じ施設から即OKが来ることもあるとか。

また、家へ退院させる場合も「安全に」退院ができるかなどが問題になるということで、もし退院後に何か起こった場合は、病院に責任があったのではと訴えられることも考えないといけないようです。先ほどの私の友人が担当した別の患者さんは、もう退院できる状態だったのですが、いざ退院!というときに、「うちの冷房は今壊れていて今日みたいな暑い日に家に返されたら危ない」と主張したらしく、それもそうだと退院が延期したいうエピソードもあったようです。家までの交通手段をタクシーにするか、などと考えていたときに「大丈夫、Uberを呼ぶから」と言って自分で手配をして退院していく患者さんもいるとか。

日本のケアマネージャーさんも、複雑な介護ケアのコーディネートをするのは大変だと思いますが、それでも日本の介護システムは一律だということだけでも「まだやりやすい」のではないかと思います。アメリカではそれぞれ加入している健康保険が違うため、この患者さんのこのプランではどの施設でどこまでのケアが受けられるのか、また他のオプションはあるのか、などを毎日の仕事にしているケースマネージャーさんはすごいなと思ってしまいます。

ブログ執筆者

橋本実和
(米国・日本看護師、米国看護学士)
IPEC看護英語教育アドバイザー

アメリカ・カリフォルニア州のCommunity Collegeで看護教育を経てAssociate Degree in Nursing(ADN)を取得。NCLEX-RN合格後、バークレー市内の病院のがん・血液科病棟にて病棟ナースとして5年間従事。その間にカリフォルニア州立大学にて看護学士を取得。帰国後、IPEC看護英語専任教師として活躍しながら、日本の看護師免許を取得。現在はインターナショナルスクールのスクールナースとして働きながら、IPEC看護英語教育アドバイザーを務める。

Nursing English in Action

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