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【海外の看護現場から】外国人がイギリスで看護師として働くには

外国人がイギリスで看護師として働くには

私は日本で看護師免許を取得し、数年働いてから渡英しました。イギリスの看護師登録機関であるNursing and Midwifery Council(NMC)では、EU外で教育を受けた看護師を登録するための特別なプログラムを設けています。現在は私が登録した当時とはシステムがかなり変わっていますが、今回は私がどうやってイギリスで看護師になったかをお伝えします。

私がNMCに登録したのは2005年でしたが、当時はSupervised Practice(監督下での臨地実習)が必要でした。これはイギリス国内の病院、または老人ホームで実習し、その職場のMentor(職場での指導的立場の看護師)が審査して安全に看護師として働けるということが証明されれば、NMC登録への推薦がもらえる、というものでした。実習期間の長さは様々で、まずNMCに初回申し込みをした後、自国の看護師免許や看護学校の成績、推薦状など必要書類全ての英訳を提出すると、Decision Letter(決定通知)が届きます。その通知で申請者に必要なSupervised Practiceの期間がわかります。ほとんどの外国人看護師には6か月間の実習が必要でしたが、英語圏で働いた経験がある申請者には3か月間、また教育方法がイギリスと大きく異なる国の申請者には9か月間という場合もあったそうです。私の場合は6か月間の実習が必要でした。

Decision Letterを受け取るまでは概ね順調でしたが、実習場所を見つけるのにはとても苦労しました。当時は老人ホームで実習する選択肢もありましたが、私は病院での実習を希望していたので競争率が非常に高かったのです。その中でも特に国営病院は、実習中の給料面で恵まれており、更に実習後の雇用も約束されていることが多かったため、数名の募集に100人以上が集まることも珍しくありませんでした。選考にはまず書類審査があり、次に筆記試験や集団面接を受け、それを通過してやっと個人面接を受けることができます。私は、その後もずっと働くことになる国営病院の脳神経科病棟で実習できることになりましたが、実際に実習を始める頃には、渡英してからすでに1年が経過していました。

実習では、最初の1か月くらいは先輩たちについて一緒に患者さんを看ていましたが、それ以降は独り立ちし、投薬以外の処置をほぼ一人で行っていました。英語の壁にぶつかり、何度も涙しましたが、指導者や同僚の多くが外国人で同じように実習を受けてきた先輩だったので、皆さんから温かく見守ってもらい、何とか乗り切ることができました。5月から実習を開始し、11月に実習を終えてNMCに申請の後、12月に晴れてイギリスの看護師になることができました。

 

現在はComputer Based Test(CBT)とObjective Structured Clinical Examination(OSCE)という2つの試験に合格することが必要です。 CBTは120問ある看護実践の知識についてのコンピューターテストで、多肢選択式です。イギリス国外でも受けることができます。OSCEは対面式のシミュレーションテストでマネキン、もしくは患者役の演技者に対する看護のスキルを試験官に審査されます。こちらはイギリス国内でのみ受験が可能で、私がイギリスで働いていた病棟にも看護助手として働きながらOSCEに挑戦するフィリピン人が何人かいました。彼らは自国での経験もあり優秀な人たちでしたが、OSCEはなかなか難しい試験のようで、1回では合格できずに何回か受験していました。

当時と現在でも変わらずに必要なのは、英語力を証明するための試験です。イギリスでは、日本でも最近よく耳にするようになったIELTS(Internationa English Language Test System)という試験が主流です。IELTSはAcademicとGeneralという2つのカテゴリーがあり、当時必要なスコアはGeneralで6.5でしたが、現在ではAcademicで7.0と高くなっています。IELTSは日本でも受験可能で、私も日本で2回受けましたがスコアが伸びず、渡英してからIELTSの専門コースに2か月間通い、やっと十分なスコアを取ることができました。当時は実習を終えて看護師として登録するときにIELTSのスコアが必要だったので、実習をしながらIELTSを受けている人もいましたが、今は最初にNMCへ申し込む時点で7.0のスコアが必要だそうです。なかなか高いハードルだと思います。

イギリスでは最近やっと外国人看護師にも滞在許可の取得が可能になってきたところへ、COVID-19の騒動が起きて、なかなか先が見えない状態が続いています。将来海外で働きたいという方にはつらい状況ですが、英語はいくら勉強してもしすぎということはありません。この機会にしっかり英語を身につけて、私のように実習で泣かないように、がんばってください!

 ブログ執筆者

吉濱 いほり 英国・日本看護師、英国看護学士

日本で看護短期大学を卒業後、病棟勤務を経て渡英。Supervised Practice Program (現在のOversea Nurses’ Program)を履修し、英国看護師としてNursing and Midwifery Councilに登録。脳神経外科・内科病棟に勤務しながら、City, University of Londonにて看護学士(BSc Hons)を取得。National Health Serviceの病院で14年間勤務後、 2019年に帰国。

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