スペシャルインタビュー
IPECが推進する看護英語教育は、「日本の医療現場において基本的な看護業務を英語で運用できる看護師を養成する」ことを目的としています。
臨床の現場で活躍する看護師向けの研修を企画される看護部長にお話を伺いました。
山根看護部長:
沿革概要:大阪国際がんセンターは1959年に成人病センターとしてがんと循環器に特化した病院として設立しました。その後2006年には特定機能病院に、2007年には都道府県がん診療連携拠点病院として指定され、大阪府がん医療の統括的施設となりました。2017年に現在の中央区大手前に新築移転したことを機に、あらためてがん医療に注力する決意表明も込めてがんセンターと名称変更を行いました。そして同時に、患者サービス、治療、診断、研究などすべての要素を国際レベルに向上したいという思いで名前に「国際」という冠が付けられました。移転後の2019年にはがんゲノム診療拠点病院となり、同年にジャパンインターナショナルホスピタルズの認証も受けています。病院機能は高度急性を担い、病床数は500床です。
看護職の理念および看護師像とは:「患者の視点に立脚した高度ながん医療の提供と開発」という病院の理念のもと、看護部は「がん看護を牽引する看護師として多様性に対応し、患者の生きる力を支える看護を提供する」ことを理念として、看護部の基本方針の1つに「がん看護の専門性の発揮と、国際化への対応が出来る看護師の育成」を掲げ取り組んでいます。多様性に対応するという観点からは、外国人も多様性の中の1つの個性と捉えて看護が出来るそんなインクルーシブな職場の醸成に向けて、職員に対しても患者さんに対しても個々の価値観や強みを認め合える看護師の育成を目指しています。
山根看護部長:2019年頃から右肩上がりに外国人患者さんが増加し始め、その後3年間はコロナ禍による渡航制限はあったものの、在留外国人数は減少することなく増加していました。外国人患者の増加に伴い、2020年頃から院内では外来・病棟に関わらず、様々なトラブルがおこるようになっていました。 理由としては職員の外国人に対する理解不足や、コミュニケーションの問題によるものでした。看護師に行ったアンケート結果からも、今まで外国人患者と関わった経験のある看護師の約80%が、文化の違いやコミュニケーションにおいて困ったことがあると回答したことから、大変ストレスフルな状況であるということがわかりました。 そのため、これまで看護部を中心に、外国人患者受入れサポートチームの発足や、外国人患者対応マニュアルの作成、医療通訳機器の利用推進のための教育活動、種々の短時間セミナーの実施、異文化交流会など、外国人患者対応力の向上に向けて4年間取り組みを行ってきました。 医療通訳機器は随分と使い慣れてきたものの、看護師の外国人に対する苦手意識の克服にはほど遠い状況でした。看護実践の中で大切にしたい、患者に寄り添う気持ちや、生きる力を支えるための信頼関係の構築に向けては、もっと看護師自身のこころの壁を低くするための取り組みが必要であると考えていました。 自分がもし異国の病院で診察や治療を受けることになったら、言葉が通じない病院で医療を受けることになったらを想像すると、個人差はあっても不安と心細さを感じない人はいないと思います。 外国人患者さんと日常的に行う挨拶や会話においては、必ずしも医療通訳を依頼する必要はありません。 例えばその国の言語で「おはようございます」や「ありがとうございます」と挨拶をしたり、痛みの程度について尋ねたり、そのような日常会話を通してコミュニケーションを図っていくことは、信頼関係を構築する機会となります。 私たち看護師は、孤立感を覚えがちな外国人患者さんに少しでも歩み寄り、精神的に寄り添う事が大切です。外来や入院中、24時間患者さんに一番近い存在である看護師が、精神的なプレッシャーを感じることなくコミュニケ―ションがとれるようになるために、今回看護場面に必要な英語力を共に楽しく学ぼうと考えました。
山根看護部長:今回、高校卒業程度の英語力であり、英語での日常会話に不安がある看護師、ナースコールで初回対応を行う際に、最低限のコミュニケーションが出来る英会話を学びたい看護師を対象として46名の募集を行いました。短期間で定数を超える申し込みがあり、実際には50名を対象に初回の看護英語を放課後レッスンとして、1回70分程度の3回1コースとして行いました。最初は、恥ずかしそうに参加していた人も、回を重ねるごとに話す声も大きくなり、自ら積極的に質問をする姿も見られました。
実施後のアンケート結果からも、78%が大変満足した、満足したと回答してくれていました。また、いただいたご意見からも「大変楽しかった」「あっという間に時間が過ぎていた」「もっと他の事も学びたい」「この後も学習を続けます」などの意欲的なご意見が多く寄せられていました。看護師はもともと学習意欲の高い専門職です。看護師の倫理観を背景に、外国人患者さんにも日本人患者さんと同様に質の高い医療や看護を届けたいという思いを忘れずに、これからも外国人患者対応力の向上に取り組んでいきたいと思います。
山根看護部長:今年度初めての看護英語への取り組みでしたが、参加された方から継続に対する意義を感じる声をたくさんいただいたので、次年度も継続的に企画していきたいと思っています。
また今回の参加者を対象に今年度はフォローアップ研修を院内で自由参加で行うことも、現在計画しています。楽しく学んで実践に活かす!を心がけて取り組んでいきたいと思っています。
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大阪国際がんセンター