What's New

【メディカルニュースコラム】食事と運動でがんのリスクを減らす ~アメリカがん協会ガイドライン改訂~

1981年以降、がんは日本の死因の第1位を占め*1、日本人の3人に1人ががんで亡くなると言われています*2

この傾向は他の先進国でも同様で、がんが死因第2位のアメリカ*3では、先日アメリカがん協会(American Cancer Society: ACS)による「がん予防のための食事・運動ガイドライン(ACS Guideline for Diet and Physical Activity for Cancer Prevention、以下ガイドライン)」*4が発表されました。これは2012年以降初めての改訂で、最新のエビデンスにもとづき、がん予防に向けた政策提言はもちろん、一般市民やコミュニティー向けの有益な助言を示しています。

今回の改訂版では、以下4点を推奨事項の柱としています。

  1. Achieve and maintain a healthy weight throughout life.(生涯を通じて健康的な体重を達成・維持する)
  2. Be physically active.(体をよく動かす)
  3. Follow a healthy eating pattern at all ages.(あらゆる年齢において健康的な食事パターンを守る)
  4. It is best not to drink alcohol.(飲酒は避ける)

前回のガイドラインと方向性は変わりませんが、改訂版で特に強調されているのは、活動量を増やすこと、赤身肉・加工肉・加工食品を避けること、飲酒を避けることです。

成人の活動量の目安として、ガイドラインは2.5~5時間のmoderate-intensity physical activity(中強度の運動)、または1.25~2.5時間のvigorous-intensity physical activity(高強度の運動)を毎週行うことを推奨しています。中強度・高強度の運動の具体例は、ガイドラインや世界保健機関(WHO)が提示しています*4*5

また、食事については、野菜等を含む栄養価の高い食材を取り入れ、健康な体重を維持すること、さらに、個々の食材の栄養価だけでなく食事全体の内容や調理法等も含め、より包括的な「eating pattern(食事パターン)」としてとらえるよう推奨しています。

がん予防のための運動・食事指導を英語で行う場合、以下のような表現で説明できます。

*活動量について、ガイドラインでは週あたりの時間数を示していますが、ここでは1日あたりに表現を変更しています。

  • It is recommended to get 30 to 60-minutes of moderate physical activity, such as walking, gardening and housework daily.
    毎日30~60分間の適度な運動、例えば歩行、庭の手入れ、家事などが推奨されています。
  • It is recommended to keep a healthy eating pattern by eating dark green, red, and orange vegetables, fiber-rich legumes, fruits, and whole grains. Also, it is good to avoid drinking alcohol.
    緑黄色野菜、食物繊維の豊富な豆類、果物、未精白の穀類などを取り入れ、健康な食事パターンを保つことが推奨されています。また、お酒は飲まない方がよいです。

今回のガイドライン改訂版では、個人の努力にとどまらず、コミュニティーの誰もがこれらの推奨を実行できるよう、国から自治体レベルまで、官民一体となって取り組む必要があると訴えています。

年齢や性別、国籍、居住地、収入等に関わらず、すべての人が健康な生活を送ることができるよう、私たち一人一人の意識改革と行動が求められています。

 

*1 厚生労働省:死因順位別にみた死亡数・死亡率の年次推移:人口動態統計年報 主要統計表(2020年6月28日アクセス)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth7.html

*2 労働省:秋葉副大臣会見概要(新たながん研究戦略の策定)(2020年6月28日アクセス)
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000024482.html

*3 CDC: Leading causes of death for 2017 (2020年6月28日アクセス)
https://www.cdc.gov/nchs/fastats/leading-causes-of-death.htm

*4 ACS: The ACS Guideline for Diet and Physical Activity for Cancer Prevention (condensed version) (2020年6月28日アクセス)
https://www.cancer.org/healthy/eat-healthy-get-active/acs-guidelines-nutrition-physical-activity-cancer-prevention/guidelines.html

*5 WHO: What is Moderate-intensity and Vigorous-intensity Physical Activity?, Global Strategy on Diet, Physical Activity and Health(2020年6月28日アクセス)
https://www.who.int/dietphysicalactivity/physical_activity_intensity/en/

ブログ執筆者

久々宇 悦子(カナダ看護師、日本看護師・保健師)

日本で看護大学卒業後、国内で病棟勤務を経てカナダ渡航。独学でカナダ看護師試験(Canadian RN Exam)に合格、看護師免許取得。就労ビザ取得後、トロント市内の地域基幹病院に入職し、外傷・脳神経外科ICUにて看護師として2年間勤務。帰国後、看護職能団体にて看護労働や学会事業等に従事。

カテゴリ一覧
コラム
海外体験談
看護留学
セミナーレポート
オンラインプログラム
看護英語テキスト