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【海外の看護現場から】イギリスの看護師と看護助手の業務範囲

【海外の看護現場から】

皆さんの病院で看護助手の方たちはどのような仕事をされていますか? 私が日本で働いていた病院では、器具の消毒や食事の配膳、シーツ交換、環境整備などが主な仕事でした。これに比べると、イギリスの看護助手たちはもっと様々な仕事を行っています。助手の仕事内容が異なれば、看護師の仕事内容も同じく異なってきます。日本との業務範囲の違いはとても興味深いので、詳しくご紹介します。

イギリスで看護師として働き出した頃、まず指導者から行うようにと言われて戸惑ったのは、抜糸でした。日本でも最近は看護師の特定行為として研修が進んでいるようですが、当時の私はやったことがありませんでした。イギリスでは術後のwound care(創傷ケア)は看護師が主体となって行います。手術記録には抜糸をする日が書かれているので、その日の担当になった看護師は朝のward round(病棟回診)で抜糸の可否を医師に確認した後に行っていました。

それに加えて、術後ドレーンの抜去も看護師が行うことが多いです。抜去後に縫合の必要がない単純な術創部のドレーンは看護師が抜きます。手術記録にはだいたい24時間~48時間後と記載されているので、術後の排液量を医師に報告して抜去して良いかの指示を仰ぎます。医師の許可が出たらドレーンを抜き、6時間ほど様子を見て異常がなければ、その日のうちに退院させることもあります。指導者と共に初めてドレーン抜去を行った時のことは未だに忘れられません。ドレーンを引く力加減が分からず、とても時間がかかりました。指導者は横で「もっと力を入れて引っぱりなさい!」と言いますが、途中で切れてしまったらと思うと恐ろしくて、大いに冷や汗をかきました。患者さんには非常に申し訳なかったです。

外科に勤務していると、このwound careの必要な患者さんが沢山いるので、全てを終えるのに非常に時間がかかります。6人から8人の患者さんを担当しながらこのような処置をしつつ、どのように時間内に勤務を終えるのかというと、Healthcare Assistant (HCA /看護助手)の業務範囲が日本と比べてかなり広いので、多くの業務を任せているのです。

まず、バイタルサインの測定は、その病棟にもよりますが、ほぼHCAが行います。ただし、術後や状態が不安定な患者さん、Glasgow Coma Scale(グラスゴーコーマスケール)などのアセスメントが必要な患者さんは、看護師が行わなければなりません。HCAが行った場合は、測定値を看護師に報告し、指示を仰ぐことになっています。また、HCAからの報告がなかったことで、後に患者さんが急変してしまった場合であっても、最終的には担当看護師の責任になるので、看護師側からも異常値がなかったかを逐一確認することが求められます。

また、HCAが行えることの一つにvenipuncture(静脈穿刺)があります。これには採血はもちろんのこと、留置針による血管確保も含まれます。venipunctureを行うには、看護師も同様ですが、venipuncture training(静脈穿刺の訓練)を受けてテストにパスしなければなりません。長い経験を持つHCAの中には、医師や看護師が失敗してしまった患者さんの採血をいとも簡単に成功させて、その後いつも医師や患者さんから指名を受けていた人もいました。ただし、HCAは投薬ができないので、血管確保の場合は生理食塩水でルート内をフラッシュすることができません。生理食塩水であっても静脈注射による投薬とみなされるからです。そのため、挿入後は速やかに医師や看護師が生理食塩水でのフラッシュ及びロックを行います。

色々なことができるHCAですが、最初に必要な資格は特にありません。HCAとして職を得てから様々なプログラムやコースで訓練を受けるのが普通です。HCAはだいたい3段階のレベルに分かれていて、訓練を受けてできることが増えるとレベルも上がっていき、給与も上がっていきます。HCAとして働きながら看護師を目指すプログラムもあります。

このように、イギリスと日本では看護師とHCAが担う業務範囲が違っていて、戸惑うことも多かったです。今ではすっかり慣れて、最初は恐る恐るやっていた抜糸やドレーン抜去は、元々細かい作業が好きなこともあり、自分にとって得意な業務の一つになっています。

 

 ブログ執筆者

吉濱 いほり 英国・日本看護師、英国看護学士

日本で看護短期大学を卒業後、病棟勤務を経て渡英。Supervised Practice Program (現在のOversea Nurses’ Program)を履修し、英国看護師としてNursing and Midwifery Councilに登録。脳神経外科・内科病棟に勤務しながら、City, University of Londonにて看護学士(BSc Hons)を取得。National Health Serviceの病院で14年間勤務後、 2019年に帰国。

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