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勉強会報告:カンボジアで働く日本人看護師の集まり

開催日:2016年5月3日(火)16:00-17:30
講師:Sun International Clinic
消化器内科専門医 木暮 道夫
参加者:看護師8名

カンボジアで最も多くみられる疾病の中に「胃腸炎」があげられます。その為、カンボジアで働く看護師は、日本人旅行者や滞在者の方々のその症状に対し、適切な医療機関を紹介したり、実際に看護したりという経験が多いのが現実です。今回の勉強会は「胃腸炎」の病態生理、治療を専門医から学び、カンボジアでの症例を発表する事で情報共有する事を目的として開催されました。

今回はSun International Clinicの消化器内科専門医 木暮道夫先生に「胃腸炎」についてご講義頂きました。講義の内容は、「一般論」、「下痢をきたす疾患(感染性腸炎)」、そして「実際の対応について」の3部構成で、常時質問が飛び交う賑やかな勉強会となりました。
「一般論」では、東南アジアの渡航者感染症の中で、汚染された水・食品からのウイルスや細菌による「感染性胃腸炎」の発生頻度が諸外国と比較し高いという事、「感染性胃腸炎」は多種多様な病原体により発症し、また、食中毒、外科的疾患、炎症性腸疾患などと鑑別するためにも、症状、所見、経過、便性状、腸管外症状、患者生活背景などを参考にして診断する事が大切だと話されました。続いて、「下痢をきたす疾患(感染性腸炎)」では、病原性大腸菌、コレラ、細菌性赤痢、アメーバ赤痢、サルモネラ感染症、腸チフス、腸炎ビブリオ、ジアルジア、カンピロバクターの病態生理と治療について、症例を挙げながらわかりやすく説明されました。最後の「実際の対応について」は、右側結腸優位の腸炎の鑑別として、カンピロバクターやサルモネラなどの感染症が挙げられ、他の感染症との鑑別に有用であるとの説明がありました。大腸を除いた腹部臓器から生じる痛みは、胃のあたりが痛いと感じるそうで、患者の訴えとしては、「胃が痛む」と表現されます。実際はおへそより下にある小腸の末端の方が痛む場合も「胃が痛む」と感じるため、「胃が痛む」という訴えに対しては、胃かもしれないが、肝臓、胆嚢、膵臓、十二指腸、小腸が痛みの原因である場合があるので注意する必要があると話されました。胃腸炎の治療としては、抗生剤の慎重な投与や脱水の治療について説明されました。自分で作れる電解質補正液の紹介や食事療法、旅行者対策など患者説明の際に有用な情報が得られました。

先生の講義に続いて、看護師2名からカンボジアで罹りやすい「アメーバ赤痢」の症例を3ケース発表してもらい先生からのコメントを頂きました。カンボジアのローカル医療機関での検査や治療内容について、「なぜ、こんな抗生剤の処方をしたのだろうか?」「顕微鏡検査の結果は本当か?」など疑問の残る対応で、発展途上国での医療の現状を改めて学ぶ機会となりました。
木暮医師より、最後に、腹痛、下痢、発熱、嘔吐の症状でパニックになりがちな患者に対し、看護師として「安心させる言葉かけをすること」が一番大切です!という言葉で勉強会を締めくくって頂きました。
1時間半の勉強会は、消化器の専門医から実際に講義を聞く事で、胃腸炎に対する基本知識が得られると同時に、症例を共有することで、カンボジアでの特有な胃腸炎を学ぶ機会になったという声を参加者からお聴きしました。今後も継続して勉強会を開いて欲しい要望も出ましたので、今後の看護師の集まりの会の参考にしていきたいと思います。

執筆者

森本 博美さん
日本・ニュージーランド・カンボジア看護師
国内で看護師として病棟・外来の臨床経験を経て、保健師として保健所に勤務。その後、ニュージーランドへ渡りワーキングホリデーを体験後、看護師免許を取得。クライストチャーチのPublic Hospitalの整形外科病棟に6年、老人ホームに約2年勤務。2014年にカンボジアに渡り、現在日系クリニックで看護師として活躍中。