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【メディカルニュースコラム】世界で広がるtelehealth innovation

【海外の看護現場から】

電話やオンラインで診療を行うtelehealthは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)拡大が続く中、self-quarantine(自主隔離 すなわち外出自粛)やsocial distancing(ソーシャル ディスタンシング)などの感染拡大防止策をとりながら、医療ニーズを満たす手法として、大きな注目を浴びています。

こうした社会情勢やIT技術の進展に伴い、telehealthは世界各国で急速に導入が進んでおり、世界中の政府・企業・研究機関が先端技術を駆使した革新的なtelehealthの開発競争を繰り広げています。

アラブ首長国連邦(UAE)では、政府と大手通信会社が共同でvirtual hospitalの開設準備を進めており、これは中東初の試みです*1。この病院では、患者は電話やインターネットを通じて、24時間365日いつでも医師や看護師の診療を受けることができ、smart monitor(スマートフォン等を利用した監視システム)やAI device(artificial intelligence 人工知能を備えたデバイス)で取得した日々の医療データが診療に活用されます。

同国では政府主導でtelehealthが推進されており、2020年7月には大手ヘルスケア企業が、米国・英国・タイなど国外に在籍する専門医の診療を自国にいながらにして受けられるアプリを公表しました*2。初診から退院後のフォローアップまで幅広く対応し、予約、診察、診断、処方、支払い、保険申請手続きまですべてアプリで完結できるということです。移動の手間が省けるだけでなく、ビザ取得や航空券購入といったコストや手続きも不要になり、国境を越えた医療サービスの選択を容易にする画期的な医療形態ではないでしょうか。

また、すでに米国では、国内の提携医療機関のICUやED(emergency department 救急診療部)における診療を遠隔からバックアップするvirtual care centerが稼働しています*3。例えば、脳神経科医(neurologist)が常駐しないEDに脳卒中の疑いがある患者が搬送された際に、virtual care centerの脳神経科医が高感度カメラやオンライン機器を用いて遠隔から即時診察できます。このセンターは、遠隔医療に完全に特化したhospital without beds/patients(ベッドも患者もいない病院)であり、一昔前ならまるで映画のようですが、今では現実になっています。

また、欧米各国では看護師による遠隔診療も広がっています。

ニュージーランドでは、nurse practitioner(ナースプラクティショナー)などの経験豊富な看護師がオンライン診療するnurse-led virtual clinic(看護師主導のオンラインクリニック)が各地にあり、慢性疾患管理やメンタルヘルスケア、健康教育など、幅広い内容のケアを提供しています。自宅で受診できるうえに価格も手頃で、医師よりも丁寧に診てもらえると、患者からも好評のようです*4*5

世界中で少子高齢化が進み、がんや糖尿病といった慢性疾患のさらなる増加や、COVID-19のような新興感染症の台頭が予測される中、限られたマンパワーを効率的に活用し、質の高いケアをどこでも誰でも受けられる医療体制のあり方として、telehealthは今後ますます躍進すると思われます。

COVID-19後の世界では、オンライン診療が当たり前になり、対面診療のほうが珍しくなるかもしれませんね。

 

*1 Ahmed El Sherif, UAE to set up first virtual hospital in the Middle East, Healthcare IT News, 2020年3月6日(2020年8月31日アクセス)
https://www.healthcareitnews.com/news/europe/uae-set-first-virtual-hospital-middle-east

*2 Mulk Healthcare launches the Middle East’s first E-Hospital, Trade Arabia,
2020年7月8日(2020年8月31日アクセス)
http://www.tradearabia.com/news/HEAL_370064.html

*3 Mercy Virtual Care Center(2020年8月31日アクセス)
https://www.mercyvirtual.net/worlds-first-virtual-care-center/

*4 Almeida, S., & Montayre, J., An integrative review of nurse-led virtual clinics, Nursing Praxis in New Zealand, 35(1), 18-28, 2019(2020年8月31日アクセス)
https://www.nursingpraxis.org/351-an-integrative-review-of-nurse-led-virtual-clinics.html

*5 New Zealand Nurses Organisation, How nurses working in nurse-led clinics improve health outcomes
https://www.nzno.org.nz/LinkClick.aspx?fileticket=Oj-oHlZYPAU%3D&portalid=0

 ブログ執筆者

久々宇 悦子(カナダ看護師、日本看護師・保健師)

日本で看護大学卒業後、国内で病棟勤務を経てカナダ渡航。独学でカナダ看護師試験(Canadian RN Exam)に合格、看護師免許取得。就労ビザ取得後、トロント市内の地域基幹病院に入職し、外傷・脳神経外科ICUにて看護師として2年間勤務。帰国後、看護職能団体にて看護労働や学会事業等に従事。

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