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【メディカルニュースコラム】パンデミックで注目を浴びるtelehealth

【海外の看護現場から】

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中で拡大する中、telehealth(遠隔医療)への関心が高まっています。直接対面せずに電話やインターネットを用いて診療を行うtelehealthは、患者・医療従事者双方の感染リスクを下げ、個人防護具を節約し、受診控えも抑制できる効果的な診療形態として、改めて注目を浴びています。

日本では元々、遠隔地の医療アクセスや医師の勤務環境を改善する目的で、政府主導でオンライン診療が推進されてきました。2018年時点でオンライン診療を導入している医療機関は全体の約1%にとどまっていましたが*1、COVID-19流行に伴う外出自粛要請や、時限的・特例的対応として初診のオンライン診療が可能になったこともあり、2020年4月時点でのオンライン診療可能な医療機関数は13.2%に急増しています*2

国土の広い米国ではtelehealthの普及が進んでいて、2016年時点で全米の60%以上の医療機関が導入しています*3。医療保険の適用範囲の制約や州の規制等の課題に伴い近年は停滞気味でしたが、今回のCOVID-19流行を受けて規制緩和等が進み、同時に患者や医療従事者からの強い要望もあり、さらに活用が広がっています。

ところで、“遠隔医療”に該当する英語表現は一般的に、telehealthやtelemedicineが使われます。

“tele-“は「遠隔の、遠距離の」と言う意味の接頭語で、今注目の”telework”は離れたところで仕事をするため「在宅勤務、テレワーク」、”telenursing”は「遠隔看護」になります。他にもtelehealthと類似の表現がいろいろあり、digital health、virtual medicine、eHealthなど、内容や文脈により使い分けられています。

世界保健機関(WHO)はtelehealthを以下のように定義づけています。

“Delivery of health care services, where patients and providers are separated by distance. Telehealth uses ICT for the exchange of information for the diagnosis and treatment of diseases and injuries, research and evaluation, and for the continuing education of health professionals.”*4

「患者とケア提供者が離れた場所にいながら医療サービスを提供すること。遠隔医療では、傷病の診断・治療や研究・評価のための情報交換、及び医療専門職の継続教育において、ICT (information and communication technology  情報通信技術)を用いる。」(筆者訳)

日本では「遠隔医療=電話・オンラインによる診療」ととらえる向きがありますが、WHOが定義するように、telehealthには、遠隔での画像・検査データ、患者や他の医師からの情報、健康管理アプリの記録など、診察時以外に得られる医療・健康情報やビッグデータ等も含まれます。「オンライン診療」に特化した英語表現もあり、“virtual visit”などと呼ばれます。

また、telehealthの中でも、今や世界で70億台*5が使われている携帯電話・スマートフォンを利用した“mHealth(モバイルヘルス)”と呼ばれる医療サービスもあります。これは、アクセスの悪い遠隔地や所得の低い世帯にも行き届きやすく、人々の健康意識やヘルスリテラシーの向上にもつながる優れた手法として大きな期待が寄せられています。

こうした人間の英知を結集した技術が今後ますます発展し、COVID-19後の”new norm(新しい日常)“において、人々が自身や社会全体の健康に関する知識を深め、将来の健康危機に立ち向かう備えができるよう心から願います。

*1 神奈川県保健医協会:オンライン診療に関する実態調査の結果について(2020年8月1日アクセス)
http://www.hoken-i.co.jp/outline/h/2019412.html

*2  Med IT Tech: 東京都でのオンライン診療実績のある医療機関は379施設(2020年8月1日アクセス)
https://medit.tech/telemedicine-report-of-tokyo-covid-19/

*3  U.S. Department of Health and Human Services: E-health and Telemedicine(2020年8月1日アクセス)
https://aspe.hhs.gov/system/files/pdf/206751/TelemedicineE-HealthReport.pdf

*4  World Health Organization: Telehealth(2020年8月1日アクセス)
https://www.who.int/gho/goe/telehealth/en/

*5  WHO: mHealth, 71st World Health Assembly Provisional agenda item 12.4(2020年8月1日アクセス)
https://apps.who.int/gb/ebwha/pdf_files/WHA71/A71_20-en.pdf?ua=1

ブログ執筆者

久々宇 悦子(カナダ看護師、日本看護師・保健師)

日本で看護大学卒業後、国内で病棟勤務を経てカナダ渡航。独学でカナダ看護師試験(Canadian RN Exam)に合格、看護師免許取得。就労ビザ取得後、トロント市内の地域基幹病院に入職し、外傷・脳神経外科ICUにて看護師として2年間勤務。帰国後、看護職能団体にて看護労働や学会事業等に従事。

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