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【メディカルニュースコラム】自由な働き方がかなうtravel nurseの今

【新型コロナウイルスへの対応】

Travel nurseという言葉をご存知でしょうか?Travel nurseとは一般的に、看護師不足への対応のために期間限定で別の地域の医療機関で働く看護師、またはその働き方のことを指します。最近は日本でも「トラベルナース」や「応援ナース」といった名称で、同じ法人グループ内の病院や、人材派遣会社を通じて全国各地の病院で数ヶ月~1年程度働く看護師が増えています。

米国では、以前からtravel nurseがひとつの働き方として定着しており、その数は急性期で働く看護師の1.5~2%を占めると言われています*1。Travel nurseは通常、nursing staffing agency(看護人材派遣会社)の雇用のもと、13週間(12週間勤務+1週間オリエンテーション)の契約で米国各地の病院などに派遣されます。臨床経験2年以上のRN(registered nurse、登録看護師)なら派遣登録可能で、派遣先の病院で常勤職員と同様の看護業務を行います。

Travel nurseの魅力として、さまざまな土地に住めること、幅広い現場や看護領域の経験を積めること、高収入、充実した福利厚生(住居費・食費無料)などがあげられます。また、契約終了後すぐに働くか、休みをとるかなどのスケジュールも自分で調整できるため、13週間働いた後は1ヶ月ほど休んで世界中を旅して回っているtravel nurseもいるようです。

そしてコロナ禍の今、travel nurseに対する需要が急増しています。既存の看護師不足に加え、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)が米国全土に拡大し、普段は人手の少ない遠隔地などで需要の高いtravel nurseが、都市部の大病院を含む全米中の医療機関で求められる事態になっているのです。

一方で、受診控えや予定手術の中止などによる通常業務の減少に伴う契約キャンセルも相次ぎ、travel nurseの雇用の不安定さも顕著になっています。リスク回避のため、パンデミックが落ち着くまで現在の契約を延長して働き続ける人がいる一方、これまでの自分の専門領域を離れ、COVID-19対応にあたることを決意した人もいます。

“I’m going to put my pediatric shoes down,・・・ I feel a strong pull to help where I can. I want to say when it’s all over, I helped in this pandemic.”*2
「(今の契約が終わったら)小児科を離れようと思います。自分が助けられるところ(COVID-19の現場)に行かなければ、と強く感じるのです。このパンデミックが終息したとき、自分も一役買ったと言いたいのです。」(筆者訳)

ここの「put my pediatric shoes down」はおもしろい表現ですね。直訳すると「私の小児科の靴を置く」ですが、「shoe」には「立場、状況」という意味もあり、ここでは「小児科で働く状況をやめる」といった意味合いになります。ちなみに「put oneself in someone’s shoes」は「人の立場になってみる/考える」という意味で、よく使われる表現です。

Travel nurseは即戦力としての働きが求められるため、一定の看護スキルや適応力、コミュニケーション能力などが必要になり、生活や収入の不安定さも伴いますが、働き方の自由度が高く、さまざまな現場で経験を積めるという大きなメリットがあると思います。そして、今回のパンデミックのような緊急事態が起きた際に、看護師のニーズが高い場所に即座に移動し、大きな貢献を果たすこともできるでしょう。最近はSNSを活用すれば、他のtravel nurseとの情報交換や、困ったときの相談も容易にできるようです。看護師を目指す方、そして看護師としてのキャリアを考えている方、将来の選択肢のひとつに加えてみてはいかがでしょうか?

ブログ執筆者

久々宇 悦子(カナダ看護師、日本看護師・保健師)

日本で看護大学卒業後、国内で病棟勤務を経てカナダ渡航。独学でカナダ看護師試験(Canadian RN Exam)に合格、看護師免許取得。就労ビザ取得後、トロント市内の地域基幹病院に入職し、外傷・脳神経外科ICUにて看護師として2年間勤務。帰国後、看護職能団体にて看護労働や学会事業等に従事。

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