メディカルニュースコラムではアメリカで最近ニュースになっている医療のトピックについて紹介したいと思います。
今回のトピックは vaping (ヴェイピング)です。日本でも電子たばこはそれほど新しいものではないと思うのですが、最近アメリカではこの E-cigarettes (電子たばこ)がトップニュースになっていたりします。電子たばこを使うことは Vaping と言われていますが、この vaping が要因となっている健康被害、また死亡が報告されています。
2019年の10月の時点で、アメリカのCDC (Center for Disease Control and Prevention= 疾病対策センター)によると、 vaping による肺疾患を発症したケースは1300件ほど報告されており、Vaping に関連付けられる死亡件数は同年8月にイリノイ州で初めて報告された後、10月までに全国で26人報告されています。※1
CDCでは、これらの肺疾患の発症件数や死亡件数のはっきりとした原因は突き止めていないとされていますが、すべてのケースで患者が e-cigarettes を使用していたことが報告されています。その中でもほとんどのケースでは e-cigarettes に tetrahydrocannabinol (THC=テトラヒドロカンナビノール)というマリファナ(大麻)の原料物質が含まれていたということが明らかになっているということです。※2
アメリカでは、電子たばこは FDA (Food and Drug Administration= 食品医薬品局)によって厳しく規制されていない現状があります。一般的には e-cigarettes にはニコチンも含まれています。ニコチンが「体に悪い」ということは一般人も知識としてありますし、商品を作っている会社もニコチンが入っていることを隠しているわけでもありません。ただニコチン以外の含有物についてはあまり公表していませんでした。その中でも問題視されているのが diacetyl (ジアセチル)という物質です。この物質は香料として使われているのですが、大量に吸い込むと気管支や肺に悪影響を及ぼすとされ、ここにも肺疾患の原因があるのではないかと研究が進められています。
肺疾患の発症や死因に関係しているという問題だけでなく、vaping が若者の間で人気を集めていることも問題視されています。たばこと言っても色々な「味」(フルーツやおかしなどの)があり、この特徴が若者受けしてしまい、中・高校生のうちからはまり、依存症になってしまっていると言われています。そのような商品を出している会社が「わざと若者向けにマーケティングをしているのではないか」とメディアなどでも叩かれています。
CDCのデータによると、2018年に実施されたアンケートでは360万人もの中高生が過去30日以内に電子たばこを吸ったと回答し、これはアメリカ全土の中学生の4.9%と高校生の20.8%に及びます。
アメリカの多くの州では禁煙キャンペーンや公共の場での喫煙に対する取り締まりが強化され、従来のたばこ喫煙者が減っていく一方で、多くの若者の電子たばこへの依存が問題になっている状況があります。
※1・※2のパラグラフ引用元:CDC https://www.cdc.gov/tobacco/basic_information/e-cigarettes/severe-lung-disease.html
橋本実和(米国・日本看護師、米国看護学士)
IPEC看護英語教育アドバイザー
アメリカ・カリフォルニア州のCommunity Collegeで看護教育を経てAssociate Degree in Nursing(ADN)を取得。NCLEX-RN合格後、バークレー市内の病院のがん・血液科病棟にて病棟ナースとして5年間従事。その間にカリフォルニア州立大学にて看護学士を取得。帰国後、IPEC看護英語専任教師として活躍しながら、日本の看護師免許を取得。現在はインターナショナルスクールのスクールナースとして働きながら、IPEC看護英語教育アドバイザーを務める。
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