日本人は「サービス」というとタダだと思っている節がある。ペットボトルが置いてあり「それサービスですよ」と言ったら黙って持って行ってしまうかもしれない。
しかし本来サービスというものは無料ではなく valueがある。教会での礼拝はチャーチサービスという。教会はタダで礼拝を提供しているわけでもない。礼拝はいくらと決まっていないかもしれないが寄付や役務の提供というような形で代価がある。
医療においては、正しい知識や豊富な経験を医療の受け手に適切に提供することから、提供するもののvalueがある。ただ、サービスは見えないもので、いわゆる無形の財、触ることができない、手に取ることができないということでintangible goodsやinvisible
valueといわれる。
医療にはvalueがあり、そのvalueを正当に主張するためには、正しい知識・適切な技術・豊富な経験が必要である。それにより初めて様々な形での代価と交換が成り立つのである。
医療に限らずサービスは普段の物の売り買いと随分と違うところがある。
知識の価格を問われても、本に書いてあれば本の価格は明示されるが、見たり触れたりできないようなものの場合は、その提示は難しい(無形性)。鋳型で作る物ならば同じものを同じように何個でも作ることは可能であろうが、サービスは必ずしもそうともいかないという特徴もある(変動性)。サービスにおいては提供する側と提供される側が同じ場に居合わせて、そこでサービスが生産されてやり取りされ消費される(同時性)。空間的・時間的に同じ所で起こるゆえにサービスをストックすることはできない(消滅性)。
しかしこういうものなので仕方がないという訳にもいかず、これらに対してどうするかを講じることが重要である。無形性に対しては、提供する医療を可視化し説明するということが、変動性に対してはケアを標準化することが対策であろう。消滅性と同時性に関しては、待機という対応が必要であろう。怪我をした人がいた場合、その場で初めて怪我の処置の仕方を勉強するのでは間に合わないので準備しておく。そこに消費があるかどうかは別としても備えがあるということが、どうしても必要となる。
2022年10月17日
特定非営利活動法人プロフェッショナルイングリッシュコミュニケーション協会
理事長 山内 豊明(医学博士・看護学博士)
名古屋大学 名誉教授
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