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【帰国ナースの独り言】 第1回:失敗から始まった私の米国看護師生活

【私の英語学習法】ジャーナル・ライティングで英語力と自分自身を磨く

私は1997年9月から米国のニューヨーク市立大学スタテンアイランド校に留学し、準学士課程を修了後看護師としてニューヨーク州の総合病院で6年間働きました。その間に働きながら大学を卒業し学士を取得しました。留学のきっかけは、日本の看護が第二次世界大戦後に導入された米国看護教育の影響を受けてきた、という歴史を知った事でした。それならばオリジナルを学べる米国で看護を学び、憧れの街ニューヨークの病院で看護師として働いてみたい、という夢を持ちました。

渡米し看護学生となり患者さんとコミュニケーションを取る中で、私のつたない英語で失敗する事が幾つかありました。それでも段々と話せるようになり達成感も出てきました。帰国し10数年経った今、このコラムの場をお借りし私の米国看護経験や臨床で役立ちそうな英語表現を3回に渡って幾つかご紹介したいと思います。

  • 第1回 失敗から始まった私の米国看護師生活
  • 第2回 米国での患者体験:リスに咬まれて
  • 第3回 申し送り:英語の聞き取りはつらいよ

では、さっそく第1回の内容に入っていきましょう。

車椅子はホイールチェアーではない

英語で車椅子の事をwheelchairと言います。車椅子には金属製の車輪状のパーツやタイヤが付いています。日本語でよく車のホイール、と言っているので私は英語で車椅子と言う時もホイールチェアーなのだと思っていました。

ところが、勤務先の病院で「ホイールチェアー」という発音は同僚看護師には全く通じなかったのです。「はあ?」と言うような彼女の表情は今も忘れられません。実は米国でのwheelの発音記号は【wíːl】で、ほぼ「ウィール」に近い音で発音されています。その為「ホ」をはっきりと発音していた私の言い方では伝わらなかったのです。ちなみに白色のwhite【(h)wáit】も、ほぼ「ワイト」のように発音されており、「h」の音が消えます。それまで何度もwhiteをホワイト、ホワイトと言って通じていなかった事が恥ずかしくて、自分もホワイトアウトする、みたいに消えたくなりました。

怖い足!?

日本人が覚えるのに苦労する発音に、「L」と「R」があると思います。私もよく両者を取り違えてしまいます。私が患者さんのフィジカルアセスメントをしていた時の事です。彼女は「My legs look scaly.」と言いました。私はscalyという単語をscaryと聞き違えて、でも変だと思い、「Did you say, your legs look scary?」と聞き直しました。scary【ské(ː)əri】は怖い、恐ろしいという意味です。形容詞scaly【skéili】は「うろこ状の、ガサガサした」という意味で、名詞形はscaleです。

つまり彼女は私の足はガサガサしている(乾燥でひび割れている)、と言いたかったのでしょう。ですのに、私はscary legs 怖い足、という勘違いをしてしまいました。冬になり私のかかとも乾燥で皮膚がパックリ裂けた口みたいになると、確かにscaryなscaly skinだわ、と当時の事を思い出しながら保湿に努めています。

本当はlieなのにずっとlayと言い続けてしまった

患者さんに「ベッドへ横になって下さい」という時、英語で何と言うでしょうか。答えは「Please lie down on the bed.」です。lie down は検査や処置などで患者さんに横になってほしいときによく言う表現です。そして、lieとよく似た単語でlayという語があり、大変間違えやすいです。2つの語の違いを大まかに表にまとめました。

動詞の種類 lie
(自動詞:その動詞自身で意味が通る)
lay
(他動詞:~を、に相当する目的語が必要)
意味 横たわる、横になる ~を横にする、~を置く
発音 【lai】 【lei】
例文 Please lie on your back/stomach.
仰向け/うつ伏せに横になって下さい。
Let me lay your fractured leg on this pillow.
骨折した足をこの枕の上に置きますね。

私は患者さん達にずっと「Please lay down on your bed.」と言い続けてしまっていたのです。「この看護師は私に何をベッド上に置けと言っているのだろう?」と、まごついた患者さんもいたかも知れません。しかし、長い間誰もその不自然さを指摘してくれませんでした。まあ、意味はなんとなくわかる、という感じで合わせてくれていたのでしょう。自分の間違いに気付いてからは「lightを消してlie down」のような押韻によって覚え, 気を付けるようにしました。

wheelchair、scaly、lie などは発音の難しさや類似した語と混同する事で相手に伝わらなかったり覚えるのが難しいと感じる英単語ではないでしょうか。これからもこのコラムの中で、私が難しさを感じ、ひと工夫し覚えられた英会話表現などをお伝えしながら自身の米国看護体験をご紹介していきたいと思います。

ブログ執筆者

永塚志保 (元米国看護師、日本看護師)
日本で准看護師として6年間病棟勤務後渡米し、米国N.Y.州のCUNY/College of Staten Islandに入学。準学士課程修了しN.Y.州看護師試験合格。6年間州内の病院で看護師として勤務しながら同大学で学士、修士課程修了。帰国後日本の看護師国家試験に合格し、神奈川県内の病院勤務。英検®1級。

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