猛暑の夏も終わりに近づき、涼しい日々が続いていますが、皆さんは今年の夏はどのように過ごされましたか?ブログを読まれて海外で働く看護師に興味が湧いてきた方もいらっしゃると思います。Part1-3までは森本さんにニュージーランド(NZ)で看護師として登録するまでの話を聞いてきました。今回は看護師として仕事を得るための情報を伺っています。NZでの就職活動やNZの医療システムについてなど、役に立つ情報を盛り込んでいますので、最後まで熟読されることをお勧めいたします!
NZで看護師として仕事を探す方法には下の3つがあります。
①Web上で探す
②新聞の求人欄で探す
③知人の紹介
① 公立病院のサイトで見つけることができます。公立病院は各地域にあり、もし、オークランドに住みたいと思ったら、Auckland District Health Board(オークランド地区ヘルスボード)のサイトhttp://www.adhb.govt.nz *1で、「careers(職業)」の欄をみて、看護師求人の情報を得る事ができます。残念ながら給料までは載っていませんが、「給料が一番大事です!」と思っている方は、NZ Nursing Organisation (NZNO:看護師の組合)のサイトhttp://www.nzno.org.nz で、「Multi-Employer Collective Agreement」のp22に記載されている「Pay Steps」を参考にしてください。*2Step1~6までの経験年数で時給が記載されています。1年目はStep1で経験5年以上はStep5になりますが、個人の経験内容などで設定されますので、参考程度に見てください。
*1 アドレスがhttp://www.adhb.health.nz/に変更になっています。(2019年3月現在)
*2 https://www.nzno.org.nz/support/collective_agreementsにアクセス後、各agreementをご自身でご確認ください。(2019年3月現在)
② 週2回決まった曜日に、住んでいる地域の求人広告が掲載されます。そこには、市立病院や老人ホームなど、公立病院以外の医療機関の求人も掲載されているので、公立病院以外での就職を希望する方は新聞をチェックします。
③ 知人が公立病院で働いていれば、内部情報として、一般に公開されるより早くに求人情報を得ることができます。いわゆる「口コミ情報」で、どのような病棟か、スタッフの人間関係はどうか、仕事の忙しさなどを、どこまで正確かはわかりませんが、知ることは出来ます。
【日本との違い】*公立病院の就職希望をした場合
・CV(Curriculum Vitae:履歴書)にCover Letter(カバーレター)をつける。
Cover Letterは履歴書の前に表紙(Cover)として入れる手紙(letter)のようなもので、履歴書に書かれた職歴や技能と応募職種との関連性を説明し、「自己PR」「将来の意欲」などを誠実に書くことで、採用する担当者に、「この看護師に興味がある!」とか「この看護師を雇いたい!」と思わせることが就職への決め手となるといっても過言ではありません。文章が苦手な私も、サイトに色々な例文があるので、それを参考にしてA4で1枚ほど作成し、就職先に履歴書と一緒に提出しました。
・面接者は病棟の看護師長・主任・教育担当者など。
日本では病院全体の募集で、総務課・看護総婦長・教育担当者の方などが何十名もの応募者を対応したりしますが、NZでは、病棟毎の採用となっているため、各病棟の看護師長・主任・教育担当者などの方々と直接面接することになります。
・Skypeや電話面接も可能。
NZは看護師人口の45%が外国人看護師という統計があり、諸外国からの応募があります。
なので、日本に居ながらにして面接が受けられます。もし、日本での面接を希望する場合、国際電話やSkypeで受けることができます。電話だと顔が見えないため、面接で聞かれそうなことをメモしたものを目の前にして答えることが出来るというメリット!?もあります。
・面接後には、推薦者に連絡がいく。
履歴書の最後には、必ず推薦者の連絡先を1~2名書くようになっており、面接後は必ずその方に連絡がいき、面接者の仕事状況や雇いたい人物かどうかなど質問されます。日本で電話やSkype面接の場合は、英語の話せる上司かスタッフの方の名前と連絡先を記載することが大切です。
面接は1回のみで、約60分で終わります。日本のある病院のように、作文や1次・2次面接などはありません。
聞かれる内容としては、日本の面接とは大きく変わりませんが、色々な看護師の過去の経験を元に情報をまとめてみて、その中で答えに困った内容としては、
・マオリ族の文化を尊重する事について
・整形外科看護における自分の考え
・なぜ、記録が必要か
・状況設定問題(同僚間の争い、患者からのクレーム、など)
・整形外科Nsとしてどのような長所をもっているか
などでしたので、前もって調べて、自分なりに完結明瞭に答えられるようにまとめて覚え、面接当日に備えました。
日本の医療制度とは異なりますので、NZの医療システムについては知っておく事は大切です。面接対策の一つにもなり、就職してからも役立ちますので簡単に触れておきます。
GP | ・日常的な病気 ・GP(General Practitioner:一般開業医) |
---|---|
病院 | ・専門医の受信が必要 ・公立・市立病院⇒GPからの紹介状が必要 |
救急病院 | ・緊急時:111 ・公立病院救急外来受信 |
上の表にまとめたように、ニュージーランドでは、日常的な病気に対する一般診療はGP(General Practitioner:一般開業医)という、いわゆる「かかりつけ医」の診察を受けます。事前に予約が必要になります。その後、更に専門医への受診が必要となった場合は、GPからの紹介状を書いてもらい、公立・市立病院の受診をします。緊急時には救急車を呼び(電話番号:111)公立病院に搬送されます。事故の場合はACC(Accident Compensation Corporation)と呼ばれる事故補償制度があり、治療費・移送費・リハビリ費用・休職中の給料(80%)・死亡時の葬儀費用に至るまでの補償がありますが、そのかわりに損害賠償訴訟を起こさない決まりになっています。つまり、個人の争いを避け、損害賠償にかかる費用と労力を考慮した制度です。詳しくは、オークランド日本国総領事館のサイト https://www.auckland.nz.emb-japan.go.jp/itprtop_en/index.htmlをご参照ください。
*今回は、就職活動のポイントとNZの医療制度に至るまでを森本さんにお聞きしました。実際に体験された方にしか分からない面接時の質問内容などは、とても参考になったかと思います。この内容を知っているのと知らないのとでは、就職決定の合否を大きく左右すると言っても過言ではないのでしょうか?次回は「日本とNZ病院での看護業務の違いPart1」についてお伝えしていきます。お楽しみに!
森本 博美さん
日本・ニュージーランド・カンボジア看護師
国内で看護師として病棟・外来の臨床経験を経て、保健師として保健所に勤務。その後、ニュージーランドへ渡りワーキングホリデーを体験後、看護師免許を取得。クライストチャーチのPublic Hospitalの整形外科病棟に6年、老人ホームに約2年勤務。2014年にカンボジアに渡り、現在日系クリニックで看護師として活躍中。
※ 本ブログは森本さんが留学された当時の情報です。現在とは異なる場合がございますので、必ず最新情報はご自身でお調べください。
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*写真は、私が就職したクライストチャーチ病院で、約600Bedsの2次救急病院で、2011年にマグニチュード6.3の地震のあった地域に建っています。