第2回転職活動編のコラムで紹介したGraduate Programの間、私は最初の6か月を日帰りの手術や内視鏡検査をする病棟(Procedure Unit)で働き、残りの6か月を脳神経内科(Neurology)の病棟で働きました。
Graduate Programが終わりにさしかかるにつれ、皆、2年目の進路について考えます。Graduate Programを修了したからといって自動的に配属先が決まるわけではないからです。皆、自分が働きたい病棟の求人情報などをチェックし、それぞれの病棟で面接を受ける必要があります。面接は各病棟の師長や副師長が行います。各病棟により募集人数や契約内容などの条件も異なります。契約内容とは、週何日勤務なのか、契約期間に制限があるのか(例えば産休のカバーなど)、それとも終身雇用なのか、などです。
Graduate Program期間中に配属になった病棟に応募する人もいれば、全然違う病棟に応募する人もいます。また、他の病院に転職する人もいます。
私がGraduate Programでお世話になったロイヤル・メルボルン病院(Royal Melbourne Hospital:以下RMH)は、オーストラリアを代表する公立の総合病院のひとつです。様々な診療科があり、病棟数は20近くあります。私の場合、同じ病院で働き続けたいとは思っていましたが、どの病棟の求人に応募するか悩みました。特に働いてみたい専門分野はなかったので、病棟のリストを作り、少し興味がある・興味なし、という風に分類しました。その結果、総合診療科(General Medicine)なら様々な病気に対応できるので勉強になるかなと思い応募することにしました。
総合診療科といってもRMHには、総合診療科をベースとした病棟が3つあります。1つ目は、総合診療科、呼吸器科、呼吸器疾患集中治療室のある病棟。2つ目は、私が後に働くことになるAcute Medical Unit。この病棟は特殊で少し説明が難しいのですが、簡単にいうと、救急に来る内科患者の確定診断を待たずに引き受け、診察、検査、診断、治療プランをたて、すぐに治療を開始し、72時間以内の退院を目指すという病棟です。3つ目は、総合診療をベースとし、せん妄対応の病室(Delirium Management Unit:以下DMU)を兼ね備えている病棟です。私は3つ目の病棟の面接を受け、看護師2年目をスタートさせました。
合計30床のこの病棟には、多国籍のスタッフが働いていました。患者のバックグラウンドも様々で年齢層も幅広いのですが、やはり50代以上の方が多かったです。疾患も多岐にわたりましたが、特に多かったのはうっ血性心不全(Congestive Cardiac Failure:CCF)、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)、肺炎(Pneumonia)、転倒(Fall )、せん妄(Delirium)などです。
DMUが設置されている目的は、患者への外からの刺激をできる限り減らし、自他へのせん妄による暴力的行為のケガのリスクを減らし、せん妄の原因・病気の治療に専念するためです。
DMUに入院するにはご家族の同意が必要です。ドアに鍵をかけることもあるので「拘束」と見なされているからです。徘徊などして他の患者に迷惑がかかる時以外は、鍵をかけることはありません。
DMUは30床のうち4床で、部屋の中にはカメラが設置されており、外からモニターで中の様子が確認できるようになっていました。部屋の中は基本的にベッド、椅子、テーブルしかありません。病室にはかならずある酸素アウトレットや流量計などもスライド式の鍵付きドアで隠せるようになっています。せん妄患者の中には暴力的になる人もいるため、凶器になるようなものは最初から置かないようになっています。テーブルや椅子も食事の時以外は部屋の外に出す場合もあります。
今回は、総合診療科をベースにした病棟の紹介、就職した病棟についてご紹介しました。
次回のコラムではシフトや勤務時間などについてご紹介します。
※本ブログは松本さんの滞在当時の情報です。現在とは異なる場合がございますので、必ず最新情報はご自身でお調べください。
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オーストラリア看護師 松本 真由子
オーストラリア、メルボルンにあるラ・トローブ大学で学び、看護師免許取得。取得後、ロイヤル・メルボルン病院の脳神経内科、感染症病棟、総合内科などで勤務。働きながら、2011年オーストラリアン・カソリック大学大学院にて、Graduate Certificate in Clinical Practice (Medical)を修了。
2012年よりAssessment and Planning Unit(現:Acute Medical Unit)へ異動し、Clinical Nurse Specialistを経て、Associate Nurse Unit Managerとして勤務。 看護師長代理、ロスター・マネージャーを経験。2020年3月、病棟がコロナ対応病棟として稼働。2021年帰国。