出勤してまず初めに行うことは、前シフトの看護師からの申し送りです。申し送りの紙には、病棟に入院中の全患者(30人分)の情報があらかじめ記載されています。内容としては、名前や生年月日、病院のID番号をはじめ、入院日、入院理由、既往歴・持病、治療・処置内容、住居状況(誰と住んでいるか、どのレベルの介護施設に入居しているかなど)、どの専門職(理学療法士など)に診てもらう必要があるか、その他注意事項、などが記載されています。
病棟により申し送りの方法も異なるのですが、私が勤めた病棟ではまず、前シフトの責任者から次のシフトの看護師全員に申し送りが行われます。その際、全患者についての詳細を申し送りするのではなく、緊急性の高いことや皆で注意すべきことのみを申し送りします。その後、自分の担当患者を割り振られ、各々ベッドサイドで前シフトの担当看護師より申し送りを直接受けます。
I | Identity (患者の紹介) |
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S | Situation (現在の状況) |
B | Background (背景、今までの経緯) |
A | Assessment (検査データや所見からの評価) |
R | Response/ Recommendation (治療内容、提案、患者に必要なこと) |
ISBARを使うことにより、情報を漏らさずスムーズに申し送りすることができます。
総合診療科には、持病が多く、薬の処方チャートが何枚もあるような方が多くいます。入院中は病院が提供している薬を服用してもらうのが通常ですので、患者が持参した薬を使うことは滅多にありません。病棟にはそれぞれ小さな薬品部屋があり、そこで看護師は薬の処方チャートを見ながら薬の準備をし、ベッドサイドまで持っていき投与します。
薬の投与の際には「8 rights」という8つの以下の項目を確認することが求められます。
しっかり服用するのを確認するまでベッドサイドを離れないのがルールでした。
処方チャートに記載される薬の投与時間は、6時、8時、12時、16時、18時、20時、22時が主流です。特に食事の時に服用しないといけない薬の場合は、薬剤師がwith mealと記載してくれていました。
処方チャートは医師が記入し、薬剤師がチェックします。ただ、薬剤師のチェックが終わっていないチャートを使うことも多々あるので、薬の準備をする際に看護師もチャートに不備がないか必ず確認します。読みにくい箇所があったり、処方日が書いていなかったり、医師の署名がなかったりというようなこともあるので、その場合は投与前に必ず医師に修正をしてもらいます。また、Nurse Initiative Medicationとよばれる薬があり、これは看護師が1回限り医師の処方なしに投与できる薬のことです。処方チャートには、定期的に投与する薬の処方(Regular Medications)以外に、Nurse Initiative、電話による処方(Phone Order)、1回限りの処方(Stat Order)、症状が現れた場合のみ投与可能な薬(Prn=Pro re nata. ラテン語が由来です。 )を記入できる箇所があります。
※本ブログは松本さんの滞在当時の情報です。現在とは異なる場合がございますので、必ず最新情報はご自身でお調べください。
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オーストラリア看護師 松本 真由子
オーストラリア、メルボルンにあるラ・トローブ大学で学び、看護師免許取得。取得後、ロイヤル・メルボルン病院の脳神経内科、感染症病棟、総合内科などで勤務。働きながら、2011年オーストラリアン・カソリック大学大学院にて、Graduate Certificate in Clinical Practice (Medical)を修了。
2012年よりAssessment and Planning Unit(現:Acute Medical Unit)へ異動し、Clinical Nurse Specialistを経て、Associate Nurse Unit Managerとして勤務。 看護師長代理、ロスター・マネージャーを経験。2020年3月、病棟がコロナ対応病棟として稼働。2021年帰国。